それでも私が菓子を焼く100の理由

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菓子焼いてばっかり。この2日だけでもレモンP、ココナツB、レモンS。周知の通り製菓業界においてPといえばパウンドケーキ、Bといえばビスケット、Sといえばショートブレッドを指す。そのまえはりんごPであるとかDFのBrとか。もちろんドライフルーツのブラウニーを指す。そういったものを焼いている。さっきはCh&KのZC焼いた。ところでこのように量産する様を見ているとまるで製菓の魔法使いのようだとお思いかな?しかし勝手のわからない男といえば私を指すので本とにらめっこというか私が一方的ににらむ格好なのだが、本を見ながら「ふむふむ、奈津子、こんな感じで合ってる?」であるとか「ふむふむ、奈津恵、こんな感じで合ってる?」であるとかを言ってる。
なんかこう、なんでこんなことやってんだろうなと。
なんかこう、なんかやってる感というか、仕事してるふり感というか、生産的な時間感を多少なりとも演出できるみたいなところなんだろうかな。暇をもてあますくらいなら菓子を焼け、みたいな、いつだったかの星の降る夜、そんなことをあいつのご母堂がおっしゃってたっけ。
そんなことを考えながら焼き続けているうちに製菓スキルがみるみる向上。独習者の強みか既成の枠組みにとらわれないオリジナリティあふれる商品を連発。いずれも大ヒット。たちまちちまたで噂の焼き菓子屋として一世を風靡。わずか1年のあいだに国内15店舗世界34カ国120店舗と一気に展開。ジャパン発のクッキーブランドとしてその名を世界に轟かす。その名を世界に轟かす。
という感じで、ウディ・アレンの『おいしい生活』だっけ、のようなことが、実際に、私の身に、起きる。
そういったことを視野に入れていないと言えば嘘になるけれど、それにしても最近の焼き菓子への取り組みというか、時間あったら「なんか焼こう」みたいなのは妙で。ほとんど妄執のような。今までだったらこれはブログ書きかYahoo!プロ野球の閲覧に当てられていた時間だと思う。
まあそれもこれも、上述した通り仕事をしている感を演出できるというか、今これ、営業中ですけど、営業中にパソコンに向かっていても、仕事しているのかシーズンが終わっちゃったことを嘆いているのか、プレミア12とか本当に誰得なんだろうといまだに訝っているのか、吉井コーチ退団のニュースを見て複雑な思いを抱いているのか、そういった思いをコメント欄に残しているのか、なにをしているのかよそからはわからない。ブログを書いているとしてもそれが仕事だとしても今書いてるこれを仕事とか言って本当にいいのか?という話もあるし。言っていいとは思うけど。
しかしお菓子を作っているとなると、誰が見ても「仕事熱心」となる。「怠惰のかたまり」から「仕事熱心」への華麗なる変貌。そういうことでお菓子が焼かれているのか。そういった見かけ上の話でしかないのか、営業時間外にも焼いている様を見るにつけそうじゃない気がする。真相はわからない。
ひとつ言えることは、意外にお菓子ブームが続いているなということで、すぐに潰えるだろうと書いたのは一ヶ月前くらいだった気がするけど、一ヶ月くらい経った気がするけどまだ焼いてるよ、僕今度はね、来週くらいからケニアのコーヒーになるので、ケニア最近大好きなんだけど、飲むたびにトマトっぽいな〜と思うからね、今度はだからね、ドライトマトとクリームチーズのパウンドとか作ってみたいなとか思ってるんだ、だからドライトマト作らないとなって思ってて、あちゃー、つい二日前にサンドイッチのあれのオイル漬けのためにトマト焼いたところで、あのときのやつ何個かオイルに漬けないで取っておけばよかったなー、あっちゃー、二度手間になっちゃっちゃ、って思ってるんだ、ドライトマトとクリームチーズとラズベリーのなんていうのああいうの、パテ?ディップ?先日食べて、それが美味しかったからそこから拝借したアイディアというかあれなんだ、だから早く作りたいんだ、って思っている。それはともかく、
とここまで昨日の営業中に書かれており、「、」のあとにどういった言葉が継がれようとしていたのか、皆目見当もつかない。いまは日差しが強い場所で日光浴をしながら、自分のTシャツが反射してだいたい見えている画面と向き合っている。流れるような運指も見える。わたしはプロフェッショナルタイピングピアニスト。祈りなど無駄、左胸に仏陀、右腕ではじきだすライムコンピュータ。
この記事、仮タイトルが「一喜一憂はしない」となっているのだけど、いったい何が書かれようとしていたのだろうか。まるで一喜一憂に関する話が見えてこない。そういうわけでタイトルは「焼き菓子屋の心得」にしました、という話でした。(やっぱり「私が菓子を焼く100の理由」にした)
追記:「それでも私が菓子を焼く100の理由」に変更した