『若い藝術家の肖像』を読む(57)5分か6分たてばすばらしいことになる

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友人が月1回映画を見る会みたいなことをやっていて、みんな楽しそう。僕は真冬のいつだったかに一度行って以来タイミングだとかで行っていなかったのだけど、土曜の晩、閉店したあとに自転車を走らせてその場所に行った。そこで『スター・ウォーズ』と『バッド・チューニング』と『ぼくたちのムッシュ・ラザール』を見て、終わったのは朝の7時とかで、まさかぜんぶ寝ずに見られるとは思っていなかった。
『スター・ウォーズ』は初めて見て、なんかシリーズたくさんあるからハードル高いというか、こういう機会でもなかったらなかなか見なかっただろうから見られてよかった。面白かったのだけど、なぜか3本の中でこれを見ているときがいちばん眠かった。特に最後にやんややんややっているもっとも盛り上がっているところがもっとも眠くなった。人間は不思議にできている。
『バッド・チューニング』はリチャード・リンクレイターのやつで、僕はわりと苦手だった。在校生が新入生をしごくみたいな慣例が僕は受け付けられなくて、「ダメだろ暴力」みたいな、真っ先にしごかれそうというか、あとすごいテンション高い感じがダメで(だからメガネの男の子たちの場面はとても救いだった)、それだけじゃないんだよなという感じも見受けつつも、それでもやっぱりこいつら怖いなーと思って嫌だった。
それで最後に見た、なんで5時からいちばん重い感じのやつなわけ、という『ぼくたちのムッシュ・ラザール』がすごくよくて、やっぱり人間いいなーみたいな、映画いいなーみたいな、ラザールもちびっこたちも、すごいよくて、男の子を見ていたらなんとなく『キングス&クイーン』の男の子思い出して、それにしてもちびっこたちすごいよくて、そういうわけで「やっぱり映画」と思った。
それで月曜日、引き続き「あ、映画」だったため夕方に店を出、目黒シネマに行ってこれまで見逃していたグザヴィエ・ドラン(今回見たことでやっと名前を覚えられた。グザヴィエ・ドラン。ほら、合ってるでしょ。というか)の2本立てを見ることにした。『マイ・マザー』と『マミー』。
目黒シネマは本当に久しぶりだった。2008年4月に見た青山真治の『サッド・ヴァケイション』以来で、『サッド・ヴァケイション』は新宿武蔵野館で見て、それが途方もなくよかったのでまた見に行ったのだったと思う。2008年4月か。それはあれだ、就職したててで、研修期間で僕は西小山に住んでいた。だから目黒がすぐそばだった。そういう時期か。
されとて「久しぶりの…」みたいな感慨も特になく座席につき、本を開いた。
「くたびれるのはすばらしいことだ。またあくびをした。夜のお祈りとそれからベッド。身ぶるいし、それからあくびをしたいと思った。5分か6分たてばすばらしいことになる。身ぶるいするほどつめたいシーツからあたたかい輝きがゆっくりとはいあがってきて、だんだんあたたかくなり、体じゅうがあたたかくなるのを感じ、それでもすこし身ぶるいして、また、あくびをしたいと思っていた。」(P32−33)
なんというか、寝具メーカーとかホテルとか睡眠に関わる何かの事業のあれがここらへんのところ広告で使ったらどうかな、使っても別に面白くないかな、と思ったというか、こんなに布団の時間がうつくしく、的確に、チャーミングに書かれたものって滅多にないように思う。だってほら、これから始まる映画そっちのけで俺いま布団入りたくなったよ?みたいな、そんなことを思った。
それで映画が始まり、映画が終わり、また映画が始まり、映画が終わった。
行きは初台からなんかずっとまっすぐいって、代官山のなんかちょっと複雑なところで右の右にいって、下っていった先で左にいって、そうしたら「お、目黒」な感じだったのだけど、そのつもりで帰っていたつもりがいつまでたっても「お、目黒」なポジションに当たらないというか、こんなに走ったっけ、行き、と思いながら、たしかポルシェの販売店か何かを通ったよな、ポルシェ、ポルシェ、と思いながらプジョーとか通り過ぎながら、気づいたら環状七号線というところにぶつかった。環七ってどれだっけ、と思いつつ、上に行ったら高円寺、右に行ったらなんちゃら、え?高円寺?と思い、まあでも右だよなと思って環七を右に行き、しばらくすると右に行ったら中目黒という標識があったので右に行き、そうしたら学芸大学、祐天寺など、中目黒に近づきそうな気配があったので安心しながら進んだら、中目黒にぶつかった。なんだかずいぶん遠回りをした気がします。そのせいか今日はふくらはぎに違和感を訴え登録抹消されました。帰りの途中で夜カフェ的なお店に入りご飯を食べ、それからパソコンを広げてずっと仕事に類することをしていました。ビールとジントニックが飲まれました。夜が更けました。