商品なので撮影禁止

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昼間、鈴木理策の写真展を見にオペラシティアートギャラリーに行った。
写真に触れるたびに「写真はわからないんだよなあ」と自分にエクスキューズをつけるのだけど、じゃあ小説や映画ならわかるっていうの?と、わかるってなんなの?と、詰問の一つ二つしたくなるし、「いやわかりませんよ、小説だって映画だってわかりませんよ」と弱腰に応対するし、「そもそもそれらはわかるだなんて別に言ってないじゃないですか。勝手に決めつけて詰問してこないでくださいよ」と多少の反抗を見せたくもなる。
で、鈴木理策の写真はなんかすごい楽しくて、楽しいぞ、楽しいぞ、と思いながら見たのできっとこれでよい。なんかすごいよかったですよほんと。写真ってなんかしんないけどすげー!!すごいっす!!ごいっす!!!となった。なので国民のみんなも鈴木理策を見に行ってそのあとフヅクエにゴーだよ!という流れを確立したい。いやどっちでもいいや。いやどっちでもいいというわけでもないけど。まいいや。
で、僕はこういった場所に滅多に行かないので今回初めてのそれで「へえ」だったのだけど、写真撮影がOKされていて、パシャリ、パシャリ、としている人もちらほらいて、「見る/撮る」ことが二重におこなわれている感じが不思議な感覚だったのだけど(シェアされた写真を見た人は「見たものを撮ったものを見たものを撮ったものを見る」という感じになるこの感じがなんかぐるぐる〜というか)、それで思い出したことがあって舞台は初台から離れて南青山に飛ぶ。
母親の還暦祝いに何かあげようと姉と相談したところ傘にしようということになり、先々週くらい、傘を探すことにした。
最初は僕が愛読する雑誌『ポパイ』で素敵傘の写真を見かけたので、その店に行き、そこには在庫がなく、店員のお兄さんに「かくかくしかじかで傘を探しているんですけれども、こんなこと聞くのもあれなんですけど、お兄さんだったらどこに行きますか?」と言って教えてもらったのが南青山にあるお店だった。
それで後日、「南青山などに足を運ぶ私」と何度もつぶやきながら南青山なるエリアに汗だくでおもむいた。なんせ青山なんて青山だけだと思っていたのでそこに南がつく青山があるなんて想像もしていなかった身だ。南青山、最近覚えた言葉。
それで、教えてもらったお店に入り、傘があったので傘を見た。それは素敵傘で、でも大きいし何より格好がよすぎて、うちの母親が差す感じはどうだろう、とも思った。「私は現在傘を。母の。還暦の」とこちらも店員の方に状況を伝え「しかし母には」「姉とも要相談」等を話しており、それで「これ写真とかってダメですよね…?」とダメっぽいだろうなと思いながらも尋ねたところやっぱりダメだと。「webでも見られますしよろしければ検索してみてください」そうですよね、そうします。
それでそのお店において素敵傘のブランド名を知ったため、バカは一つ覚えなのでそのブランドを扱っている周辺の店を探し、2つ行った。もう1つの方では最初に「還暦なら赤とかですかね。ちゃんちゃんこ」と言われてなんか「ふざけてんの?」と思ったのは余談だし南青山にはふざけられてもしょうがないような風貌の男性だし、と思った。それでこちらでも「写真なぞは…?」「商品なので…」のやりとり。
この、「商品なので写真撮影は禁止」というのはなんなんだろうと。それが引っかかっていた、っていう話にやっといけた。
なんとなくダメな感じはわかるけど、「商品であるがゆえに」とはなんなのか。
ググってみた感じだと、なんだったっけな、盗人たちの経路確認に使われる危険性とか、あとはディスプレイの仕方(?)が他の店にパクられる危険性とか、そんなふうな答えを知恵袋で見たのだけど、どっちも本当に盗むなりパクるなりしたい人は現場を見に行けば目にでもなんにでも焼き付けるだろうし、盗まれるのはあれだけど参考にされるなんて立派なことじゃないのかなとも思う。そうでもないのかな、けっこうな問題なのかな、業界的には。わからないけど。
今回の客である僕としては、各店のオンラインショップに行って当該商品を探してURLを送って姉に見てもらってというよりも、写真を共有して「じゃあこれにしようか」とかの方が相談がしやすくて買いやすくなるというメリットがあったし、場合によっては「検討しているんですがどれがいいですかね」とかでSNSで写真がシェアされ、素敵商品が人の目に留まり、その素敵商品を扱う店が人の目に留まり、宣伝に、ということも起こるだろう。「商品として」であるならばそういうメリットの方が大きいような気がするが、どうなのか。
それよりも「パシャリパシャリの振る舞いがこの店とはそぐわないので禁止です」と言われたほうが僕は納得するというか。あるいは「なんかもう色々な点を勘案した結果お断りしています」とか。あるいは「なんかこう、嫌なので」とか。そんなふうに言われたら「そりゃもう、嫌なものは仕方がない!合点承知!」と思うというか。
ともあれ、思ったのは、納得性が弱い禁止事項というか因果を直観できない禁止事項というのはもやっとしたものを人に与えるし、それを発する人に対しても不信感というか「思考停止疑惑?」みたいなものを感じさせやすいなあということで。
フヅクエもいくつかのことをご遠慮いただいているわけだけど、そういうのは気をつけないとなというのはすごいあるよね、と思った、という話でした。また、下手な禁止ってけっこう世の中にゴロゴロ転がっているような気がして、電車内のあれこれとか、今度からちょっと気をつけてみたら面白そうかもな、と思った、という話でした。