ポパイを買うこと

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写真は読み終えた上田岳弘の『太陽・惑星』で、これが度し難く面白かったため最新作というか二作目なのかな、の『私の恋人』を今すぐにでもほしい。しかし天気も悪く時間もなく、私の愛するジュンク堂あるいは紀伊國屋ははるか遠く。どうしたものか。Twitter等で「すいません、本日来られるご予定でかつ来られる前に本屋に寄られるご予定の方おられましたら買ってきていただきたいものがあるんですけどご一報いただけませんか?」とでも投稿するか。しかしそれもなんだかどうなんだ。
ダメ元で、というのは失礼かもしれないけどすいませんやっぱりダメ元なんです、小説弱すぎるんです、で、くまざわ書店のオペラシティ店に電話してみたところ、あると。一冊在庫があると。取っておいてくださいと。そう言ったのが16時過ぎだったか。まれに見る集中力で仕込みをどんどこ、段取りよく進め、完膚なきまでに完璧な状態を作り、17時半、店を出てオペラシティへ。
そこでレジ直行というのも味気ないし、なんか雑誌とか、新しいNumberとか出てたら買おうかなーとか思って、ちょっとだけふらっとしたところポパイがあった。
特集は「サマーボーイ、サマーガール」。表紙の上のところには「今年の夏は、アイスクリームでも食べながら、女の子とデートしよう!」とある。2015年1月号、「ガールフレンド」特集が思い出される。小松菜奈の素敵な笑顔に触れ、口角が上がった次の刹那に途方もない底のない虚無感におとしいれられた特集。似たような殺傷能力が備わっていそうなその雑誌を、それでも、レジに、持っていくッ…!
僕はこれまでも何度か書いたか書いてないか忘れたけれども雑誌というものをこれまで本当に読まなくて、買っても読まないから買わないよね、という感じだったというか雑誌を買うという選択肢を持っていなかったのだけど、店を始めてからちょこちょこと買っている。ポパイであったりブルータスであったりワイアードであったりというくらいだけれども買っていて、ポパイはなんだかわりと買っていて、今年に入って5冊くらいは買っているんじゃないか。5/8だとしたらけっこうな割合だ。
あ、書いたなそういえば。そのときは「あった方がいいかなみたいな感覚があって」みたいな書き方をしていたのだけど、そうじゃないんじゃないかと、思ったのだった。
以前も書いたように僕はおしゃれなものに対するなんか畏怖みたいな、おしゃれな人ちょっと怖いっすみたいなものがあって、僕は衣服に金を掛ける習慣はないし、素敵なスポット(スポットwww)とか知らないし、僕の興味範囲は言ってみれば小説と映画とちょっと音楽で、それは確かにカルチャーかもしれないけどいわゆるポップカルチャーとかサブカルチャー、「いわゆるポップカルチャーとかサブカルチャー」が何を指しているのかもよくわからないけれども、アニメとかゲームとかなのかな、あとファッションとかなのかな、それは違うのかな、わかんないや、まいいや、そういうのはわからないし、興味が持てないというか一瞬もっても持続しないというか、そういう感じで、アートとかもわからないし、という、そういう人間なんですけど、で、それで別にいいとは思っているんですけど、これはまだ何かの気負いなんだろうかな、出来うるならば多少そういうこともわかりたいとか、おしゃれになりたいとか、そういう欲望があるのではないか。 しかし、どうしたらそれを手に入れられるかわからない。
そのときに助けになってくれそうな存在がもしかしたらポパイ、と僕は思い込んでいるのではないか。ポパイを読めば、何かになる入り口を知れる、みたいな、そんな思い込みがあるのではないか。ボーイズ・ビー・アンビシャス、そんな思いの僕が、29歳がボーイを名乗っていいかどうかは別として、そんな思いの僕が手を伸ばしうる最果てがポパイなのではないか。僕にとってのおしゃれの最長不倒距離、それがポパイなのではないか。そんなことに思い至ったのだった。買っていれば、結局たいして読まないのだけど、買っていさえすれば、どこかに行けるのではないか、いつかはおしゃれになれるのではないか、少なくともおしゃれになれるものならなってみたいぞという思いを繋げられるのではないか、そんなふうに思って買っているのではないか。そんなことに思い至ったのだった。
ポパイ。POPEYE。ポップな視座を、ボクに。
恐ろしくてまだ開いていない。