フヅクエという名の宇宙船のコクピットから愛とかを込めて

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5月が今日で終わる。5月はSNS疲れというか、いやそれはただの誤用で、何かと疲れたりしていたためブログやTwitter等の更新が減ってしまい僕としては忸怩たる思いというか気持ちがよくない。リズム取り戻したい。
疲れといってもフヅクエが忙しくなったというわけではいささかもなく、フヅクエ以外のことでいろいろと変化があり余裕がない状態という感じなだけで、フヅクエには相変わらず静かな時間が流れている。
これは閑散としていようとそれなりに埋まっていようと同じなのだけど、この静けさの中にいるとここだけが世間というか世界から切り離された宇宙船みたいに思えるときがある。それはとてもいい瞬間で。
宇宙船。という語をそういえばいくらか前に耳にした。
それは映画『THE COCKPIT』公開記念イベント「クリエイションの悦びと憂鬱」のときで、『無言日記/201466』上映後の三宅唱×菊地凛子×武田俊×松井宏の、ちょっと度し難く素晴らしかったトークの際で、仕事場をコクピットだと思うとちょっといろいろ楽しくなるよね、宇宙船に乗って、自分がコクピットの前に座って、さあ冒険、みたいに思うと、いいよね、前向けるよね、みたいな話があった。
同じような話は監督のインタビューでも読んだことがあって、たしかにそうだなあとは思っていたのだけど、耳で聞いたためなのか、話の流れがそうさせたのか、これまでより強いリアリティを感じて改めて自分に置き換えて考えてみたら「いやーそれはいい!とてもいい!」となったのだった。
僕の宇宙船はフヅクエで、僕のコクピットはこのキッチンの中、みたいな感じで、この宇宙船をどんな方向に、どこまで遠くに飛ばせるか、っていう話か、と思うとひとまず「それはなんかおらワクワクすっぞ!」というモードになれる。いやほんと、俺にはこの宇宙船しかないからね、飛ばすよね、遠くへ、と素直に思う。
疲れたり、倦んだり鬱屈したり、いくらでもあるけれども、そんなときにこのことを思い出す。
で、コクピット内の僕の脳内では常にOMSBのニューアルバム『Think Good』のどれかの曲が掛かっているんです発売以来ずっと。これ信じられるか?静かな店の店主の頭ん中でずっとヒップホップ流れてるんだぜ?なんかその状況おかしくないか?というふうに我ながらというか我としては思うんですが、しかしずっとそうで、今もそう。
とか書いていたらさっきお客さんが帰り際に「これからコクピット見てきます」って教えてくださって、「あれ、俺の脳内のやつ音漏れしてた?」と思った。
『コクピット』ですよ、しかしほんと。
僕がこの映画の最大の美点と思うのは、「何かを成す」というのが「行為を積み重ねる」ことによってこそ生じうるというのを丁寧に示しているところじゃないかと思っていて、というか僕にとってはそれがとてもよくて。
僕は表現という言葉が苦手で、作業という言葉がわりと好きなのだけど、表現と言ってしまうとその形に至るまでのプロセスがごっそり抜けて、アーティストなりなんなりの才能なりなんなりによる見事な飛躍、みたいな感じがしちゃいがちというか。
もちろん素晴らしい作品なりなんなりができるまでには「わ」っていう飛躍のような瞬間があったり、それはもしかしたら特別な者だったりするゆえに捕まえられる瞬間なのかもしれないけれども、でも少なくとも作業というか行為というかが積み重ねられる中でこそそれは生まれるんだというか。素晴らしい発想なりなんなりとアウトプットされるもののあいだには時間が確かに流れ手がひたすらに動かされているんだというか。
超かっこいいぜ超いいぜってなる曲を作るOMSBがBimたちと曲を作る現場において、何度も何度も試行錯誤を重ねている、とちったりを繰り返しながら続けていく、すると何かが見えた瞬間があって次はそれを目掛けてやってまたとちってとちって、そしてやっとつかまえる、そんな光景を目の当たりにしていると、なんというか、元気出るというか、勇気をもらうというか、前向けるというか。
俺もこのコクピットで、じゃがいも剥いたり、コーヒー淹れたり、ケーキ焼いたり、ブログ書いたり、そういうことをやるわけですけど、どこに飛びたいのかどこまで飛びたいのかどんな格好で飛びたいのか、いまだよくわからないのだけれども、なんにせよなにかしら飛ぶんだぜって、そのために積み重ねていくんだぜって、そう思うと、明るい。
いや、違うかな。やっぱりこのやたらなワクワクは、彼らのその積み重ねが真剣な遊びとしておこなわれている様子によるものなのかな。真剣に楽しまれている様子というか。
俺もこの楽しさを忘れないでいよう、じゃがいもすら楽しく剥こうみたいな。手元だけじゃなくて前も見ようというか、じゃがいもを剥いているんじゃなくてコクピットにて宇宙船を飛ばしてるんだナウっていう、楽しもうっていう、それ忘れそうになったらこの映画思い出そうっていう、そういうところなのかな。
まあ、どれもそうなんだけど。
とにかくなんというか、ヒップホップが好き、映画が好き、ものづくりをしています、とか、そういうの関係なくもっともっと広い射程でこの映画は人を元気にする気がしているから、わりと誰にでも薦めたいから薦めているのだけど、なんかこうね、グダグダと、まとまんねーなーとか思いながら書いている今ですら、僕の気分は今とても明るくて。
いやほんと、考えなきゃいけないことは山積しているけれども、やんなきゃいけないこともきっとたくさんあるけれども、いつもいつも楽しくいられるわけじゃいささかもないけれども、なんかこうほんとね、この影響の受け方は素朴すぎるかもしれないですけど、Think GoodでDo Goodですわと、今、とても本当にそう思うわけなんでした、という話だったわけでした。