大宮で思い出す

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ツイッター等でも書いたけれど今日の昼間に出産直後の友だちの家に行ってご飯を作るという予定があり、昨夜、図らずも早い時間に店がすっからかんになったこともあり、あれ、電車間に合っちゃうじゃんこれ、なにこれ帰れちゃうじゃん大宮、ということで最終の電車で大宮に帰った。 実家というか両親が住んでいるというか僕が高校時代までを暮らしたのが大宮で、去年の5月あたりから店を始める10月まで居候していたこの町に帰るのは久しぶりのことだった。
埼京線だか湘南新宿ラインの大宮方面の電車に乗るために歩いていたら、去年の夏の工事の時分にほぼ毎日大宮と初台を往復していたのを思い出した。行きはいいのだけど帰りの、JRの改札入って3番線4番線のホームに行くまでの通路を歩くのがすごく大嫌いで、耳にイヤホンをさし、音楽のボリュームを最大にしてどうにかしのいでいたことを思い出した。昨夜も同じで、OMSBの5月発売のアルバムの先行発表(?)の曲を、もっとも大きな音で聞いた。それはもっともよかったし、そこを歩く際にもっともふさわしい音だった。
大宮はまあ変わらず大宮で、大宮といっても家は大宮駅から数駅、歩いたら1時間くらいのところなのだけど、夏の時分はその道をわりと歩いて帰ることを選択したりもしたのだった。それを思い出した。夏の夜の気持ちがいいのを思い出した。
着いた家は寝静まっていた。僕は居間でビールを飲んで、何かをつまみたいと思って冷蔵庫を漁ってハム食ったりしょうがのたまり漬け食ったりひじきの煮物食ったりして、まだつまみ足りなくてクッキーの缶みたいなやつを開けたらアーモンドチョコレートが入っているのが見えた。父親がアーモンドチョコレートが昔から大好きだったということを思い出した。僕の昨今のチョコレートホリックは父親譲りだったということを初めて認識して笑った。
いつになってもウォシュレットがつかないためウォシュレット依存の僕はできるだけ使わないようにしていたトイレに座ると日めくりカレンダーが目の前にあり、昨日のは「七転八倒 つまづいたり ころんだりするほうが 自然なんだな にんげんだもの みつを」というやつで、毎日「うるせーよwww」と思っていたことを思い出した。
夜中のベランダに出て煙草を吸った。毎日そうやって向こうの暗い森っぽいところとか建物とかを見ながら同じ姿勢で煙草を吸いながら、これからの人生というか店をどうやってやっていきましょうかと、考えたり、考えなかったりしていたことを思い出した。
寝て起きて、スーパーで食材を買ってから友だち夫婦の家に向かった。
夫の方は小学生の時からの友だちで、今は職人をしていて、工事のときもたくさんというかだいたい手伝ってもらったし精神的にもすごい助けてもらった。そのことを思い出した。この道を通り家に向かって、二人に迎えてもらったいくつかの夜を思い出した。
開店から今日でちょうど半年が経ったらしかった。
今日は暑かった。太陽が照りつけてきた。僕は半袖だった。見慣れた道、暑さ、自分の格好、そういったあれやこれやが店を準備している日々のそれらと重なった。なんだこれ、すべての状況的なものが初心的なあれに帰ってがんばろう的な感じのことを俺にささやいている的なあれじゃないですかこれ完全に、と思った。
友だちの家では初めて会う新しい生命が息をしたり泣いたりしていて、僕はキッチンに立って料理を作った。