本が売れた。「売りますよ」という記事をアップした日にお取り置き1冊というご注文を受けて「わ!」と思ったのだけど、今日は初めて目の前で自分が売っている本に対してお金が支払われる、というのを目の当たりにする、という出来事があった。
その方はこのブログを好んで読んでくださっているとのことで、「ブログで見なかったら知ることも(読もうとすることもだったかな)なかった本なので」ということをおっしゃっていて、それで、というかともかく、買ってくださった。僕はそれを見て「すごい!」と思った。「本がまさにいま買われたのだ!」というか「まさにこの店を介してある一冊の本が一人の男の手に渡ったのだ!」というか。
それはとてもよいことのように僕には思えた。
その方は「変なお願いなんですけど記念的な感じでよかったらに何か書いてもらっていいですか、なんでもいいんで」という感じのことを言われ、「考えてもみなかったリクエスト!」と思った。「考えてもみなかったリクエストがいま、まさにおこなわれたのだ!」というか。いやそんなに激してはいないんだけど、いま打ってるモードというか流れがエクスクラメーションな感じなだけなんだけど。
「何書いたらって感じですけどご希望とあらば書きますけど汚しちゃっていいんですかなんだか」みたいな照れ笑いで受け、油断した。
本を開いてしまった。これまで触れることすら数えるほどしかしていなかった本を、なんの注意もなく開いてしまった。
開くと、なんか写真が最初にあった。「はっ!」と思って急いで焦点をずらし、見ないようにした。写真には男が写っているっぽかった。この小説の中に挟み込まれる写真なのだから、きっとそれはジェイムズ・ジョイスその人の写真なのだろう。「アイルランド人男性」であるとか「西洋人」とかではきっとないだろう。
焦点をずらし、視線もページの上の方というか、視界の中にぎりぎりページが収まるくらいにして、文字を書き込みやすそうな空白が広いページを探した。
そういう感じのページがあったのでそこにとどまり、僕まだ読んでないんで無責任な話ですけど面白いといいですよね、ということを書いた。面白くないにしても少なくともこの小説にまつわる記憶は楽しいものであるといいなと思います、というようなことを書いた。
そんなふうにして一冊の本が売れた。
(写真は一冊減った本の山。しかし最近の写真ひどいな。一眼レフというかちゃんとしたカメラほしいな。余っている方どなたかください(物乞い))