祝・フヅクエ10周年のご挨拶

2024.10.03
こんにちは、フヅクエの阿久津隆と申します。
2024年の10月にて、フヅクエが10周年を迎えました。
お店の継続率というのは10年で10%とか言われますので、10年は立派な数字だなと思います。
始めてからの数年は、「3年で30%とか言うけれど、そんなに潰れますかね」という気持ちだったのですが、これはほぼひとりで小さくやっていたからで、店が増え人が増えていってから気持ちはまったく変わって、こりゃ、風が吹けば潰れるな、と実感しています。
去年の今ごろは一番経営状態が悪く、それで精神的にもかなり落ち込んでいて、それに伴ってやる気もすっからかんになっていた時期で、「果たして10周年を無事に迎えられるのだろうか、1年後にはフヅクエ消滅している可能性全然ある」と真面目に思っていましたし、実際今もぎりぎりの状態ではあるのですが(早く借り入れしなきゃ!)、なんとか10周年を迎えることができました。
なので、10年はやっぱり偉大な数字ですね。
この10年でだいぶ景色が変わった感覚です。
「僕はこんな店がほしいけれど、だからつくってみるけれど、どうですか、いますかね僕の他に、こんな店がほしかった人は」という問いからフヅクエは始まったわけですが、いざやってみれば、そういう人はたしかにいてくれました。
お客さんがゆっくり本を読んで過ごしてくださる姿を見るにつけ、すぐに、これはもう間違いなくいいものだ、という確信が生まれましたし、その確信は日々強化されていきました。
始まりは本当に売上としては微々たるものでしたが、少しずつ少しずつ知られていき、少しずつ少しずつお客さんが増えていってくれました。
次第に、「フヅクエはいいぞ」「こういう場所がもっと身近にあるとうれしいぞ」という声をいただくようになりました。
開店当初の僕は、自分が食えさえすればいい、そのために初台のこの場所を読書好きの聖地にするぞ、そのポジション取れたらきっと僕は食っていけるぞ、そこ目指してみるぞという、あくまで僕の仕事、僕の店、という感覚でした。
ですが、そういった「いいぞ〜」という声をいただいていく中で、「いやー、これは実際、いろんな場所にあったほうがいいのでは? あったほうが、本の世界にとって豊かなことなのでは? ちょっと責務だったりもするのでは?」と考えていくようになりました。「俺の店」から「この場所を求めてくれる人たちの店」みたいになっていった感覚。視座?視座っていうんですかね、そういうのが上がった感覚。
そんな流れから、2店舗目の下北沢ができ、初のフランチャイズ店として西荻窪ができ(突然の朗報:西荻窪の新オーナーが決まっています。再開時期等は決まり次第またお伝えします)、そのあと経営やばいみたいなやつに直面して最近は広げる動きはまったく取れていないわけですが、広げるやつもやっていけるといいよなあ、と思っています。僕自身がやれるかどうかは別として(そして僕にはその資質がきっとない、とこの数年ずっと思ってもいますが)、「フヅクエがいろいろな場所にある世界を目撃してみたい」という欲望は僕は誰よりも強く持っていると思います。何その愉快な最高な世界は、と思うので。
この10年で、いったいどのくらいの方がフヅクエで過ごしてくださったのか、この場所でされた読書の総時間はどのくらいなのかはわかりませんが(前者はわかってもよさそうなものですが)、ものすごい量の、豊かな読書の時間を提供してこられたものと思います。ものすごい深さの忘れがたい時間、みたいなものもきっとたくさん生み出せているんじゃないかな。10年やってなお、この場所に生まれる読書の光景を新鮮に美しく感じ続けられていることをうれしく思います。商売相手のことを好きだとちゃんと感じ続けられていることをうれしく思います。10年間、「幸せな読書の時間の総量を増やす」というモットーを裏切ることのない取り組みを続けてこられたことを誇りに思います。
まず「フヅクエいいぞ」と思ってくださる方、フヅクエで過ごしてくださった方、いつか行ってみたいと思ってくださる方に感謝を伝えたいと思います。また、感謝と同じくらいの強さで「おめでとうございます」とも伝えたいです。場が続くということは、その場をいいと思ってくれる人たちにとっての祈りでもあり、そしてここまで10年という短くない期間続いてきたということはひとつの勝利でもあるはずなので
そして日々店を開け、お客さんの時間を守り、よりよいものにしようと努めてきたスタッフたちと僕にも感謝とおめでとうを伝えます。お客さんが来てくれるからこそ僕たちがここにいられるのと同時に、僕たちがいるからこそ人はここでお客さんになれるわけで、なので我々はすごい。立派。偉大。
そんなわけでフヅクエ最初の10年が終わり、次の10年が始まります。
これからも幸せな読書の時間の総量を増やしていくとともに、さらにいま僕は、「日本の読書を、もっと明るく楽しくする」という、なんだか政治家のスローガンみたいなことを本気で思っていたりもして、「読書はこうしなければならない」「読書とはこうあるべき」みたいな、よくわからない圧力や息苦しさから人の読書を解放し、「読書が今までよりも楽しい〜〜〜」「読書って意外に楽しい〜〜〜」みたいに思う人が増えることに、フヅクエが今まで以上に貢献していけたらいいな、と考えています。
ということで、フヅクエ10周年、ありがとうございます&まことにおめでとうございます!
またとないせっかくのおめでたい機会なので、ご祝儀を大募集します!(わっはっは!!!)