こんにちは、フヅクエの阿久津隆と申します。
この10月でフヅクエは11周年を迎えました。11というのは馴染み深い、いい数字です。僕の誕生日が11月11日なので。ちなみにドストエフスキーとカート・ヴォネガットも11月11日生まれです。
何周年というたびに思い出すのはフヅクエ開店の2014年10月17日の夕方、景気づけにTalking Headsの「This Must Be The Place」を大音量で聴いていた時間で、ここがまさにその場所なる、それを始めるぞ〜、と思ってから店を開けました。
ほどなくしてお客さんがやってきて、何かが注文され、そして本が開かれました。その瞬間にフヅクエに命が吹き込まれ、それから11年間、この場所で、数え切れない数の読書がなされてきました。
フヅクエを始める前に考えていたことのひとつに、「好きだと思える人たちを相手に仕事をしたい」というものがありました。
世の中にはいろんな人がいて、誰とでも仲良くできるわけではないしそうしたいとも思わないですが、でもできる限り誰とでも悪くはない関わりができたらそれに越したことはなくて、と考えたときに、本を読んでいるときの人であれば好きでいられるのではないか、本を読みたいというモードの人にであれば寄り添えるのではないか、矛盾なく、疲弊せず、気持ちよく働けるのではないか、と思っていました。
その予感が当たったことはフヅクエを始めてすぐにわかりましたが、その思いがこんなにも長く持続するものだとは予想できませんでした。
11年のあいだ、この場所で本を読んで過ごしている人たちのこと、その人たちがつくりだす光景を、こんなにちゃんとずっと愛おしく、いいねいいね〜、と思っていられるとは思っていませんでした。
買ってきたばかりっぽい本が読み始められる場面とか、今日読むぞという本が何冊も机に積まれる様子とか、そういうのを見るたびに、いいですね〜、楽しみですね〜、存分に楽しんでいってくださいね〜、みたいな嬉しい愉快な気分になり続けています。
こういう気分で働き続けていられることを幸せに思いますし、それはひとえに、楽しみにする気分とか、楽しもうとする意志とか、そういうものをみなさんが持ち寄ってくださるおかげだと思います。
いま読書を楽しみたい人たちが寄り集まり、互いのことは知らないまま尊重し合い、みんなでいい感じに過ごす、ということ。
その実現のためにみなさんが協力してくださったことに深く感謝します。
これからもみなさんと一緒に、静かで、安心して過ごせる、素敵で楽しい時間をつくり続けていきたいと思います。
また、その状態をより強固なものにするためにルールや振る舞いを研ぎ澄ませていった自分たちに改めて拍手を送ります。
より多くの方に、「たしかにThis Must Be The Placeだな〜」と感じてもらえるよう、いい仕事を続けたいと思います。
さて、この1年のあいだにもいくつか大きな出来事がありました。
休業していた西荻窪店が再開したのは1月でした。
また、去年の10周年のときにはこんなことを書いていました。
いま僕は、「日本の読書を、もっと明るく楽しくする」という、なんだか政治家のスローガンみたいなことを本気で思っていたりもして、「読書はこうしなければならない」「読書とはこうあるべき」みたいな、よくわからない圧力や息苦しさから人の読書を解放し、「読書が今までよりも楽しい〜〜〜」「読書って意外に楽しい〜〜〜」みたいに思う人が増えることに、フヅクエが今まで以上に貢献していけたらいいな、と考えています。
これは読書のSNS&記録アプリであるところの「Reads」のことで、この時期は無我夢中で開発を進めているところでした。こちらが今年の3月にiOS版のリリースとなり、多くの反響をいただき、たくさんの方に日々使っていただいています。8月にはAndroid版も無事出せました。
本の読める店フヅクエとReads。
「本の読める場所・きっかけの創出を通じ、「幸せな読書の時間」の総量を増やす」というミッションを実現していくべく、このふたつを柱に据え、豊かで楽しい読書の広場のようなものを、どでかく育てていきたい所存でございます。
近々またひとつ大きなお知らせをできる予定ですので楽しみにしていてください。
そんなところで、フヅクエ11周年、ありがとうございます&まことにおめでとうございます!
せっかくの機会なので、今年もご祝儀を大募集します!(わっはっは!!!)