Neighborhood

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先日「看板を出そうか悩み始めました」ということを書いたあと何人かの方に「どう思います…?」とうかがったところ、みなさん総じて「え、とりあえず試してみたらいいだけでは?」というトーンで、「あそうか、とりあえず試してみたらいいだけなのか」と思った。
そもそも、とも思った。
ちょうど昨日だったかおとといだったか、受けていた雑誌の取材のなかで「あくまで夜なんですね」みたいに言われたときに「やっぱり仕事が終わったあとの、一日の終わりをいい時間で締めくくってもらえたら最高最高じゃないかと思うんすよねー」というような発言をおこなっており、これはたぶん僕はよく言うことで、確かにその通りに思っていることで。
となったときに、そもそも、と思ったりもして、それって要はわりと夜の時間のこの町と接する人にも向けるのがあるべき姿なんじゃないの?と。
商圏?んなもん、日本全国や!」というこのタイトル通り、商圏?んなもん、日本全国や!といまだに思っているし、実際に「旅行で」みたいな感じで来てくださる方もおられるし現在のお客さんの多くはこの町以外の場所から足を運んでくださっている方っぽい感じだし、そうやってわざわざ欲望される対象となることはとても素晴らしいことというかうれしいというかこれ超うれしいよねほまれほまれということなのだけど、一方で「一日の終わりのいい時間」をもっと作ろうとするならば、この町に暮らす、あるいはこの町に働く人たちにもっと知ってもらおうとしてもいいのではないか。今わざわざ足を運んでくださっている方々と看板で店を知って階段を上がるなり躊躇するなり調べてからおもむくなりする方々は、平気で共存するのではないか。
初台。僕は初台という町はすごく好きで、初台最高だなと常々思っているのだけど、ただこれまで、「初台」という言葉と「フヅクエ」という言葉はあまり関係しない感覚でやっていた。家賃相場わりと高いし単身者率高いし可処分所得高いかも〜、みたいな認識はあったけど、その人たちとフヅクエがどう関係するのかあまり考えなかったし、アプローチしようともしていなかった。あくまでよそから来てもらう場所になろう、といったところだった。
のだけど、たぶんこれは先日できたスターバックスのNeighborhood&Coffeeの初台一丁目店のことをあれこれ考えたりしているなかで、上述のように、あそっか、ネイバーフッドか、ネイバーフッドっていったらここの場合は初台か、たしかになー初台の人にももっと、みたいになったのかもしれない。なんという短絡。(なおスタバ、オープンからまだ10日足らずですけどすでに3回もいっちゃった。雨の日にカフェラテ飲みたくなったらスタバ行くという流れが確立されそう)
そんなふうに「初台」と思っていたところ、おとつい、はじめて来られた方とお帰りの際に話したところ、以前からフヅクエの存在は知っていたのだけど一度店を探したときに見当違いの場所を探していて見つからなくてそれきりになっていたのだけど朝の看板を見て「あ、ここだったのか」というので夜に来てくださったとのことで、この場合は朝の看板だけど、出すことでこのように、フヅクエは損をしない、来たいと思っていた方も損をしない、両者が損をしない状況を創出できるなら、それをしない理由なんてなにかあっただろうか、と思ったのだった。 もちろん理由はたしかにあった、看板にのみ触発されたご来店は店の秩序であったり豊かな空気であったりというのを損なうのではないか、まずwebを通して知ってから来てほしい、という考えがあった、のだけど、それも実は方便に過ぎず、ただ単に僕に勇気がなかっただけなのではないか、無理解無関心を向けられるのが怖かっただけなのではないか、その可能性を極力まで下げたかっただけではないか、苛立ちたくなかっただけではないか、傷つきたくなかっただけではないか。
「いやしかし」と、「無理解者無関心者は僕にとってだけでなく」と、いくらでも自問自答は続いてしまうのだけどここで止めておこう。おわかりだろうか?看板出すことを自分のなかで正当化しようと必死になっているこの感じ。「ねえねえ俺の良心くん及び矜持ちゃん、看板出してもいいかなあ?」と猫なで声でお伺いを立てているこの感じ。
あーーーもーーー出すねーーーこれは看板。「とりあえず」とか言いながら、出してみるねーーーこれは。そんな流れだね。というか扉の横に表示する注意書き表札みたいなのすでに作っちゃったし。というか設置したしそれすでに。これで堰き止めはばっちりというか看板出てないにも関わらずこれですでに堰き止まった光景見かけたし。それ見て「あっ…」て思いながら「いや、これが必要なんだ、そうだこれが必要なんだ」と言い聞かせたし。なもんで外の看板は来週の頭からかなーーー。とりあえずねーーーとりあえず。つーか「あ、はい、もう、看板…」と思ったのが水曜日でそしたら木金と「お、悪くないじゃんなんだか」となって、なんなんだこれーーーーってなってーーー。いやでもやっぱりーーーー。出すーーーーー。出す出すーーーーー・とりあえずねとりあえずーーーーー・ー。ーー・ー・ーーーー・ーー・ーーーー・・ー・ひえーーーーーー。
これは終わりの始まりか、あるいは喜ばしい未来の始まりか、はたまた何も変わらないか、何も変わらないとしたらそれは終わりへ向けた滑落か。