本の読める店

読書日記(169)

Entry diary169

12月28日(土) 

仕込みをどうしたらいいかわからない。切らしたくないし余らせたくない、だから困る、どっちかに腹をくくるべきだ、そうだろうか? やりようはあるんじゃないか、1月最初の2週のシフトが出揃った、5人、これ、どうやって入れたらいいんだ?

暇、ド。隣は生命保険の契約だった。
ミュージシャン、年明けに大きなライブがあってそれが終わったら家族でハワイ。大阪は新幹線、九州は飛行機。グリーン車ではない。前は車だったから危ないから泊まっていこうとかあったけれど、帰れちゃうから。贅沢な悩みなんですけど。そのおかげで今日この場にいるわけですけど。

シフトができて、このメンバーで2店舗を回そうとしているわけだから1店舗の今はギュウギュウで、3月まではこういうことだ、僕のいる余地はほとんどなかった、厨房内には僕の立錐の余地はない、僕はおそらく長い時間を客席で過ごすだろう、飲み物や食べ物をどんどん注文して、みたいなことをするような気がした。つくる練習台、目を光らせて。でも目を光らせるのはむずかしいのかもしれない、席の配置的に。だから気配を常に感じ取って。
とにかく、こんなことは最初からわかっていたことだけど目の前に来ないと対応しようとしないから慌てる、山口くんマキノさんが長い時間、教える人になることになる、つまり、教え方を教えないといけない、教え方の教え方を考えないといけない、となって、仕事百科を改良していた、それがだいたい済んで店に戻った、ゆっくりのようだった、と、マキノさんが上がる直前くらいでトントンとあって忙しい感じになって、それから僕はわりとずっとひっきりなしに働いていて、楽しい、と思った。でも結局は全然ダメな土曜日だった。年の暮れくらいは忙しくなるかと思ったけれどそうじゃないらしい。
年末は、お手紙であるとかをいただくことがちょこちょこあって、今日もいただいた、読んだらなんだかベソをかきそうになった。それなりに心細かったり怯えたり不安になったりしながらやっている、そういうなかでこういうふうに、「よし」と言ってくれる人がいるのは、それが可視化されるのは、大げさでなく救いになる。支えられる。ありがたい。けっこう働いた感じがあって疲れた。どっしりと。仕込みのペースがやはりわからない。明日、味噌汁をどんな量でつくったらいいのか、けっこうのところ全然わからない。

どうしてなのか気分が重く、暗い。書評の仕事は受けることにした。

そして、彼自身としてはもちろんのこと、几帳面にきめた場所に置くように注意した。いまもそのとおりにしたのだが、まだ手も引かぬうちに、二度とこのマッチ箱を使うことはあるまい、という考えがふと頭をかすめた。この想念の生々しさに、彼もたじたじとして、ほんの束の間ながら、あらためて指さきに力がこもった。それはまるで、この小さな物体が、われわれをこの長たらしい憂き世につなぎとめる、あらゆるささやかな絆の象徴ででもあるかのようだった。とうとうマッチ箱から手を離して、ソファに倒れこんだ彼は、また吹きはじめた風の音に耳をかたむけた。 ジョゼフ・コンラッド『青春・台風』(新潮社) p.162

その想念の生々しさ、と思って、ドキドキしながら読んでいた、一度台風の目の中に入って静寂がやってきた、この先、これ以上の大嵐が来ることが予想された、「わしはこの船を沈めたくない」と船長が言って、すると突然、次の行で「結局、彼はその苦難をまぬかれた」。なんと!

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この週に読んだり買ったりした本

滝口悠生「全然」『新潮 2020年1月号』(新潮社)https://amzn.to/36W4C14

今福龍太『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(みすず書房)https://amzn.to/2qMx1qO

保坂和志「夜明けまでの夜」『文學界 2019年12月号』(文藝春秋)https://amzn.to/2RpizjC

庄野潤三『ザボンの花』(講談社)https://amzn.to/2FnBbsx

小島信夫『別れる理由 Ⅱ』(講談社)https://amzn.to/2E4yfkp

仲西森奈『起こさないでください』(さりげなく)https://www.sarigenaku.net/

千葉雅也『思弁的実在論と現代について 千葉雅也対談集』(青土社)https://amzn.to/2PNuWF3

ジョゼフ・コンラッド『青春・台風』(新潮社)https://amzn.to/2ZoefmB

水上滝太郎『大阪の宿』(岩波書店)https://amzn.to/2PU7TZ4

滝口悠生『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』(NUMABOOKS)https://amzn.to/2QhZlu1

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