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山際淳司 『スローカーブを、もう一球』(KADOKAWA)

2018年9月11日
ウイスキーを飲み足し、山際淳司を読み足し、物悲しさがあった、なんというかこれまであまり触れたことのないスポーツ選手の言葉があった。その後プロに行きその後打撃投手になったある公立高校の投手の話。突然長嶋監督が高校にやってきて巨人で取るという。世間からにわかに注目を集めるようになった。チームは、勝ち上がっていった。地方大会の準決勝の前夜、酒を飲んだ、たくさん飲んだ。彼はそのことをこう話した。

でもなんであんなに飲んだんだろ。
準々決勝までは最高のピッチングだったと思うんですよ。まわりからもほめられたし、自分でも百点以上のピッチングだと思っていた。下総農としては今までいけなかった準決勝にまで進出した。だからって、それで満足しちゃったわけじゃあないんです。もうやることはやったんだという気分で飲んだんじゃないんだね。
まわりで騒がれたでしょ。それでむしろテレちゃったようなところがあったんですね。
「すごいじゃない」っていわれたとき、それを軽く受け流して気取ることができないんですね。昔から騒がれていれば、そういわれてもどおってことなく「まあね」ぐらいいって聞き流せたんだろうけど。
酒でも飲まないとおちつかないっていうか、そんな気分になっちゃったんだね。違うんだよ、オレなんかどおってことないんだよってことをいってみたかった。オレだけ特別なんじゃなくて、みんなと一緒に遊んでいたいっていうのかな。何もいわずに超然と構えていられるみたいなことができれば、少しは違ったと思うんですけどね。 山際淳司『スローカーブを、もう一球』(KADOKAWA)p.120

この「背番号94」という話は打撃投手を続けているクロダについてこう書いて終わる。「現在、年俸は三四八万円になっている。一か月二九万円という数字である。」
うーん、かっこいいなあ、かっこいいなあ、かっこいいなあ、と思って、今じゃあ書けないことっていろいろあるよなあ、と思いながら、今のかっこいいスポーツノンフィクション(できたら野球)ってないのだろうか、あるならばとても読みたい、同時代のものをとても読んでみたい、と思って、次の「ザ・シティ・ボクサー」をいくらか読んで、これも面白くて、寝ることにし、寝ようとしたところ、なにか体というか手足の先のほうというか全体がピリピリと痺れるような感じがありそれは風邪のときのものだった、え、なになに、風邪? と思い、いやいや、と思い、意識すればするほどピリピリ風邪っぽい感じがして、熱を測ると37.9℃だった、うーむ、これは、風邪だ、と思い、明日までに治るといいなあ、ご予約がいくつか入っているんだよなあ、と思って、そのうちのいくつかはわりとだいぶ前に入れられた予約で、だからそれは、けっこう先々の楽しみな予定として持ってくださっていた、という可能性を感じさせるもので、だとしたらいよいよ、風邪引きましたごめんなさいは避けたい、と思って、がんばれ、体、と思って寝た。

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