今日の一冊

2019.09.08
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####マルセル・プルースト『失われた時を求めて〈3 第2篇〉花咲く乙女たちのかげに 2』(井上究一郎訳、筑摩書房)
2018年9月8日(土)
起きると、寝違えの痛みはずっと強まっていて、昨日は横に一本引かれた線みたいだった痛みが、今日は背中全体が痛みに抱かれているようなそういう痛みだった、スーパーに行って納豆を買おうとしたらだしが目に入って、山形のやつ、だしが目に入って、そういうさっぱりしたものを食べたいと思って、納豆と併せてだしも買って、買った、店行って、準備した、飯食って、店開けた、店開けてかられんこんを切っていた、れんこんを切っていると欠けた左手の薬指の先のことを思い出してよく気をつけるようになる、他の野菜のときも同じように気をつけたい、指先はまだ薄い、ずっと薄いのかもしれない、弱く敏感で、神経とかが近い感じがする。ちょっとのことで痛い。
極めてゆっくりの、ほとんど壊滅的といっていい始まりで、中井久夫をまた読んでいた、最初の「世界における徴候と索引」をもう一度読んで、それからプルーストを開いていた。
「ごきげんはいかが? 私の甥のゲルマント男爵をご紹介しますわ」とヴィルパリジ夫人が私にいった、そのあいだに、見知らないその人は、私の顔を見ないで、「よろしく」と口のなかであいまいにつぶやいて、そのあとに、「ふん、ふん、ふん」と、何かわけのわからないお愛想をわざとらしくつづけ、小指と人差指と親指とを折り、指輪というものをはめない中指と薬指とを私にさしだしたが、その二本の指を私はスウェード皮の彼の手袋の上からにぎった、それから彼は、私のほうに目をあげなかったままの姿勢で、ヴィルパリジ夫人のほうをふりむいた。
「あら、私は頭がどうかしたのかしら?」と夫人が笑いながらいった、「あなたをゲルマント男爵などと呼んで。シャルリュス男爵をご紹介いたしますわ。まあ、どちらにしても、大したまちがいではないのね」と彼女はつけくわえた、「あなたはやはりゲルマント家の人なんだから。」 マルセル・プルースト『失われた時を求めて〈3 第2篇〉花咲く乙女たちのかげに 2』(井上究一郎訳、筑摩書房)p.111
たぶん、重要人物の、登場だ〜! と思って、それはそれとして、小指と人差指と親指とを折って? 中指と薬指とをさしだす? と思って、自分の、小指と、人差指と、親指とを折って、中指と薬指をさしだしてみた、すると、なんだこれはwww という手の形になって、なんなのこれwww と思った。よくあることなのだろうか。
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