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レベッカ・ソルニット『ウォークス 歩くことの精神史』(左右社)

2017年9月7日
『ウォークス』を読んでいると歩行の歴史というか文化としての歩行の歴史みたいなものが今はたぶん語られていてそれは1,700年代に、詩人のワーズワースのめっちゃ徒歩旅行、で花開いた、というのがよく言われていたことだけれどもその前段階があった、それは庭だ、人はまず自然を模し、それからその外に自然を見出した、という話で、何でだったか庭を自然っぽくしたがる貴族みたいな人たちが出てきてどんどんめっちゃ広大で自然みたいになっていき、その果てに、はて、これは作るのではなく本当の自然のなかに見出せばいいのでは、ということになって敷地の外に出ていくようになった。それまでは歩いてどこかに行くというのはなかなか野蛮なことであり、賊もいるし道路も整備なんてされていないし、ということだったそうで、旅行の馬車での道中とかも、道中は余計なものであり目的はあくまで目的地にあった。それが道中の見渡す景色それ自体が目的にもなるような、そういう方法と美意識が作られていった。最初のころはいかに景色を見るかの指南書、景色をどう読んだら優雅かの指南書みたいなものまであった。嗜みだった。そういうことが書かれていた気がした。

当時の小説には歩くことが動詞ではなく名詞として頻出することも指摘に値する。(...)
これらは歩くことを「歌」や「食事」のような、ひとまとまりの意味を備えた振舞いとして表現している。すなわち歩きに出かけることは単に両脚を交互に動かすということではなく、長すぎも短すぎもしない、ある程度の継続する歩行を意味し、心地良い環境に身をおき、健康や楽しみ以外に余計な生産性のない行為に勤しむということを表現している。こうした言葉づかいには、日常的な振舞いを純化し洗練することへの意識を読み取ることができる。人はいつでも歩いていたが、その型式に常にこうした意味を託していたわけではなかった。そして、その意味はさらに拡張されてゆく。 レベッカ・ソルニット『ウォークス 歩くことの精神史 』(左右社)p.166,167

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