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Entry 0806

マルセル・プルースト『失われた時を求めて〈2 第2篇〉花咲く乙女たちのかげに 1』(井上究一郎訳、筑摩書房)

2018年8月6日
帰宅後、寝る前、「こことよそ」は明日の楽しみ、というところでプルーストを久しぶりに開いた。最後に読んでいたところが面白くないというか、なんの話してるんだろう、という話で、退屈だったこともあって開かれなくなっていたが、読んだら、電光石火という感じの面白さがあった。

しかし、嫉妬の消滅を待ちさえすればあかるみに出せると思っていたそうした興味ある問題も、スワンが嫉妬することをやめてしまったあとでは、彼の目にすべての興味を失ってしまったのであった。といっても、正確にいえば、嫉妬しなくなった直後からではない。オデットに関して嫉妬を感じなくなってからも、ひるにラ・ペルーズ通の小さな住まいの戸を空しくたたいたあの日の午後のことだけは、彼のなかにまだ嫉妬を煽りつづけたのであった。そんな嫉妬は、ある人々の体内よりもある土地やある家屋のなかにその本拠や伝染力の中心部をもっているように見える疾病に、その点でいくらか類似しているものであって、それの対象となっているものは、オデットそのものよりもむしろ、彼がオデットの住まいの戸口という戸口を空しくたたいた、もういまはかえらない過去のあの日、あの時間であるといってもよかった。いわばあの日、あの時間だけが、かつてスワンがもっていたあの恋の性格の最後の分子をひきとめていたのであって、彼はそこよりほかにはもはやそうしたなごりを見出さないのであった。 マルセル・プルースト『失われた時を求めて〈2 第2篇〉花咲く乙女たちのかげに 1』(井上究一郎訳、筑摩書房)p.162,163

スワンのオデットへの感情の修正関連の記述はいつでも、もうひと息、先に進む感じがあって、面白い、のかもしれない。もうひと息というか、体内に差し込まれている、内蔵とかに触れている手が、もう数センチ前に進められて、えい、のような。

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