今日の一冊

2019.08.03
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####保坂和志『ハレルヤ』(新潮社)
2018年8月3日
家に帰り、私は何を買いに出たのかそんなことまで思い出せないが何かを買いに自転車で駅前に向かった。午後三時頃だった、五月の爽やかな晴れた日の午後三時だ、いや四時だったか、私は急にLアスパラギナーゼを思い出した、自転車を止めて、妻に、
「Lアスパラギナーゼがある。」
と言った、妻もそれで思い出した。
保坂和志『ハレルヤ』(新潮社)p.32
どうしてだかこの、「午後三時頃だった、」で、ガツンとなる、なんでなのか、なって、その前のところ、外階段に座って煙草を吸いながら読んでいた、
待っているあいだ私は花ちゃんと外のそこにいることにした、キャリーの戸を待つあいだいつものように私は開けた、戸を開けて、中で縮こまっている花ちゃんを撫でるつもりだったのが花ちゃんは戸が開くとキャリーから出た。そしてキャリーを置いていたベンチから下に跳び降りた、花ちゃんはベンチのすぐ下のコンクリートにもあまり長いこといずにクローバーの地面を歩きはじめた、このとき花ちゃんは物の影や形ぐらいは見えていた、だから簡単にベンチから跳び降りた、チワワだったかトイプードルだったか、小さい犬を抱いた老夫婦が診察にきた、建物に入る前に奥さんが地面に屈んだ、
「四つ葉のクローバー見つけた。」
「ほお、きっといいことがあるね。」
私はそれを聞くだけでもう泣いていた、私たちもこういう夫婦になるんだろうか。五月の晴れた郊外のキャンパスは鳥がしきりに鳴き交わしていた、ツバメが低く飛び回っている、花ちゃんはその下で喜んで歩いている。
同前 p.29
私はここを読むだけでもう泣いていた。 今日は左手首が痛い、骨折でもしたように痛い、夜、イライラしていた。敬意。そのあと、ほっこりしていた。帰り、ソファに座ったら、いくえみ綾の短編をひとつ読んだ、数日前になんとなしに開いたところ、読んだ、「ラブレター」がなんだかすごく面白くて、それでまた読んだ格好だった。それから、昨日アルコールを摂取しなかった、今日もしない、と思っていたら、シャワーを浴びていたら今日はたいそう働いたし、ビールを飲みたい、という気持ちになってきて、コンビニに行き、ロング缶の金麦を買ってきて、飲みながら「ハレルヤ」、読み終わり、布団に移り、「ハレルヤ」を頭から読み出した、眠くなり、寝た。
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