「本屋B&B三周年記念 本屋大放談」

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既報の通り先日「本屋B&B三周年記念 本屋大放談」に参加して、人前にこの痩せこけた身を晒すというプレイをおこなってきた。
人前で話すという経験は僕には、会社員時代にプレゼンをする、結婚式でスピーチをする、という2例くらいしかなく、さらにとにかく小心で緊張しいの僕は「これ、際中に嘔吐するんじゃない?」という程度に緊張をするので、話をいただいてから思い出すたびに緊張していた。
そのため予習をして、想定問答集めいたものでも作成しておこう、作りはせずとも脳内で想定問答を繰り返して備えよう、そのように思い、司会を務められる内沼晋太郎さんの著書であるところの『本の逆襲』を再読し、一緒に並ぶことになる森さんの「森の図書室」を再訪する、ということをおこなった。
ただ、小心で緊張しいと書いたけれどもここにもう一つ付け加えねばならない語があって、僕は小心で緊張しいでそしてものぐさなので、想定問答を脳内で繰り広げることもせず、要は何も考えず、緊張するに任せたまま当日を迎えたのだった。
一つだけ決めていたことはあって、それは「ビールを飲むのは終わってからにしよう」ということで、『本の逆襲』の本屋でビールを出すことに関する箇所にはこうある。
「イベント時には出演者の人は飲み放題にしているため、普段であれば話さないようなこともついしゃべってしまったりして盛り上がるだろうというのも、予想通りでした。来場客よりむしろ出演者のほうが酔っている、ということのほうが多いくらいです。」(P149-150)
それはまずいと。ついうっかり、「森の図書室って本当に本を読むための場所として作っていらっしゃいますか?クラウドファンディングのときから「やべー完全にかぶったんじゃないか」とか思ってすごい気になっていて、何度かおじゃまさせていただいているんですけど、照明わりと絞っているし音楽も人の声もすごいあるし、読む場所というよりは本を通じてコミュニケーションするように作られた場所だと感じるんですが」などと口走ったら、まずい雰囲気になってしまうかもしれない。(でも慣れ合うくらいならハラハラするような雰囲気の方が聞いている人にとっても面白いかもしれない、等々)
そのように考えていた。
この日はトーク3本立てのあれで、第一部は「小さな新刊書店をつづけるということ」というテーマで福岡のブックスキューブリック、新潟の北書店の方がお話しするあれで、僕は緊張をフリスクでごまかしながら、それでも楽しく随所でケラケラと笑いながら聞いていた。
それが終わって10分くらいの休憩を使って「深呼吸せにゃ」と思って外に出て煙草を吸っていたところ、スタッフの方が「そろそろ」という顔つきで来られたので一緒に階段を上がった。「お飲み物はビールで?」と問われたので「はい」と答え、それで自分の席というか話す場所についてしばらくするとビールが運ばれ、森さんと挨拶を兼ねて乾杯をおこなった。夏、昼間から飲む、ビール。
それでトークは始まり、どんな態度でいるべきか決めかねながら聞かれたことにしどろもどろに「ほんと話すの向いてないなー」等思いながら答えていたところ、わりと早い段階で森さんが「本を読む場所というよりは」という話をされ、僕は「あ、そうだったんだ!なーる!全部納得!」となって一気に楽になり、「ディスり合いになるのかと思いました」と安堵の意を表明したほどだった。「本を介する場所」としての森の図書室と、「本を読む場所」としてのフヅクエの志向の違いが明確になった瞬間だった。それは本当にハッピーな瞬間だった。
ハッピーになればお酒も進むため結局1時間20分ほどのあいだで3杯ビールをいただき、ビールが進めば口も滑らかになるのか、「放談」らしい発言もいくつかあり、それは僕の場合であれば「インスタ女子が嫌いですね」「ブックカフェにこれまでどれだけ期待を裏切られてきたことか」といったところだと思うのだけど、それぞれ次の記事あたりが補足になるだろうか。
なおインスタ云々はその場でも「アップしていただくのとかむしろありがたいんですけれども」と言っていて、何が嫌かといえばそれが主目的になっている人、それ終わったらもう完了で即座に帰りますみたいな感じの人が嫌だ、ということで。
またブックカフェ云々は、たぶん僕らの前の北書店の佐藤さんの「俺こそが本屋だ、と言いたい」という感じの発言の強烈な挟持に影響を受けたというか引っ張られたというか、「フヅクエこそが本を読める場所だと言いたい」というところなんだろうと。
話すことの何が怖いかっていうと「インスタ女子が嫌い」みたいな切り抜かれた言葉だけがひとり歩きするとかそういうの怖いみたいなところがありケアしておきたいみたいな感じでこの記事自体書き始められたところがあるのだけど(ケアも何もツイーティングやブロギング等をサーチングしている限りひとり歩きも何もっていうくらいいかなる気配もまるでないのだけど)、まあそれだったら最初から危うい発言はするなというところもあるのだけど、まあ、しゃべっちゃったものは仕方がないので。
というわけでケアというか弁明というかという目的が達せられたのでもう特にないというか放心という感じであれなんですが、まあなんか、思った以上に楽しい時間でした。とても。内沼さんに的確な補助線を引いていただきつつ、わりとちゃんと話せた部分が多かったような気もする。聞いていた方がどうだったかは知らないけど(特にまったくフヅクエを知らなかった方々にとって)、ま、無事任務完了と言って差し支えなかったのでは、という感じで、ビールがうまかったです、という話でした。