本の読める店

『若い藝術家の肖像』を読む(13) as a Young Man

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アイリッシュウイスキーをちびちびと飲み何かをつまみながらオフェイロンの『アイルランド―歴史と風土』を読む。そんな夜が昨夜だった。
本を読みながらでも映画を見ながらでも、そういうときに何かをつまむと、昨日の場合はバナナチップスだったのだけど、すごい勢いでつまみを消費してしまう。本当だったら二口飲んで一枚つまんで、くらいのペースでいきたいものだけど、1:15くらいの割合でつまみにいってしまって、つまりつまむべきものをむさぼるということになってしまう。あっという間につまみは(もはや「むさぼり」と呼ぶべきかもしれない)なくなって、やっと落ち着いて酒と本、みたいになる。これは悪癖だ。

そういうわけで昨日もバナナチップスを猛烈な勢いでむさぼって一息ついたあとにアイリッシュウイスキーをちびちびと飲みながら『アイルランド―歴史と風土』を読んだ。
ただ、昨日は一日中考えごとをおこなっていて、それが頭からいっかな離れてくれない。文字を追おうとしても目はどんどん上滑りするだけで、「いけないいけない」とか思って元の位置に戻しても、同じことが繰り返される。
諦め、ため息をつき、本を閉じる。向こうを眺め、視線を壁の上で溶けさせる。「今から読もうとしているウェルテルだっけ、ウェルテルも、こんなふうに夜な夜な、あれこれ不毛なことを考えこんだり悩んだりしたのかな、そうだとしたら、早いとこ伴走というか一緒にそういうウダウダしたいな、アイルランドの歴史とかどうでもいいから」
そんなことを、2杯か3杯の酒でゆるくなった意識のなか、思うのだった。うそうそ。昨日はウェルテルのことなんて考えてない。それはいいとして、ウェルテルはいったい何を悩んだんだろうか。まあウェルテルですらないんだけど。

タイトルが気になる。 日本語だと「若い藝術家の」となっているけれども、原題は「A Portrait of the Artist as a Young Man」で、「〜of the Young Artist」ではない。「ひとりの若者であるところの藝術家の肖像」といったような感じだろうか。英語のニュアンスわからないのであれなんですが、「as a young man」は大事な気がする。実業家であり一児の母みたいな。格闘家であり政治家みたいな。藝術家であり彼は若い男である、その肖像に描かれる射程は「Young Artist」のそれよりもずっと広くなりそうで、いよいよ一緒に悩んどく?と肩に手を回してもよさそうな気配がそこらじゅうに立ち込めてくる。

気がついたらグラスを片手に持ったまままどろんでいて、「いけないいけない」と思って寝ることにした。そんなふうに過ぎていく夜がある。アズ・ア・ヤング・マン。

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