ものすごくうるさくて、ありえないほど長いメニュー表のこと

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4316字。
フヅクエのメニュー表の、ビールだとかコーヒーだとかの表示に辿り着くまでに書かれる注意書きというか但し書きというか挨拶というか、の文字数だ。ありえないほどの長さではないにせよこれだけの文字を費やして何か書いている飲食店を僕は他に知らない。いささか度を越している気がしないわけでもない。いや、越していない。
このメニュー表について来てくださった方がこんなことを書かれていた。
「おそらく書いた本人は、来たひとに心おきなくくつろいでもらうためのちょっとしたコツ、みたいなつもりなんだろうけど、読むひとが読んだら「ここでは死ぬ気でくつろげ!」「全身全霊をこめてリラックスしろ!」「オレの言うとおりに完全に自由に過ごしていいからな!」みたいにとられてしまう可能性がある。」
そういう感じをその方は「obsessive」=「クドい」という言葉で考えられていて、「あ、ディスられたかな」とかちょっソワソワしたのだけど、そのあとで「ただしその結果として、この空間には、ほとんど小津安二郎的と言うほかない強制された弛緩、ないしはもっとも弛緩した強制状態が存在しえているのだから」とあり、さらには「わたしたちは何度でも何度でも、その場所へと立ち還らなくてはならないだろう」という言葉とともに締めくくられているのだから、肯定してくださっている、もしくは「いや俺は別段いいと思うけど、これ危うくないか?いや俺はね、俺はなんかわかる気がするしこういうのありだとは思うんだけどさ」ということじゃないか、と僕はとらえているのだけどどうだろう。
で、「みたいにとられてしまう可能性がある」だけれども、現状アホほど集客に困っている店が言うことじゃないかもしれないけれども、「それで「あ、無理だ」となる方だったらもう来られない方がきっといい、なのでそう取られても構わないです」という感覚でいる。(繰り返すけれど現状のこの閑散たる惨憺たる店がいったいどの面下げて言ってるんだという感じが我ながら強くするのだけど)
なぜ構わないか。店とお客さんの双方にとって不幸な出会いならばそれはもうなんていうかない方がいいんじゃないというか。
ん、なんか言葉が足りないな。書いててニュアンスが自分でもよくわからない。
なんというか、店ってわりと食べログ的な「良し」と「悪し」で判じられやすいものだと思うのだけど、僕は相性が大事だと思っていて、であるならば全員と相性がいいということはありえない話なので、一定数の人に失格の烙印を押されることを恐れる必要がないというか。忌み嫌う人がいて、一方で好きになってくれる人がいる、というのがきっと健全な状態というか。嫌われたくは全然ないけど。
なんというかそもそも、作ったショップカードにしてもURLしか情報を入れていなくて、場所や営業時間を知りたければまずwebにアクセスするしかない、で、そこに表示されるトップページの文章を読んでもらう(読まないにしても「何か言いたいことがある」ってことだけでも知ってもらう)、というふうにしていて、これは積極的意識的なふるいのつもりでいる。だから店内においてもメニュー表が(わりと無自覚だったけど)ある種のふるいとして機能するのも何も悪いことじゃない。
「あ、無理だ」「二度と来ません」「押し付けがましい」「黙っててください」「頼むから死んでください」等々あるだろう。聞きたい言葉ではないしいざ聞いたらとても凹みそうなんだけど、それはそれとしてどうにか甘受して、それでもなお商売の継続に足るだけの人々に支持される店を作らなくちゃな、作ってやるぞ、がんばれ、ということだ。
ちょっと長くなったしよくわからなくなったので今日はここまでにして次ももう少しこの話題について書いてみるんじゃないかという気がしている。(ここまでで1582字。いつもより長い)