『若い藝術家の肖像』を読む(7) ウイスキーの起源としてのアイルランド

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朝から雪が降って道が白くなっていてビシャビシャ言わせながら病院に行き、国保無料健康診査なるものを受けてきた。血圧計が手動のやつで、それを僕は初めて見た。
腹囲を測りながら痩せてるわねー私の半分よとか言う「ザ・おかん」という感じの看護師は採血の際に注射針をやや打ち損じたらしく、なかなか血が吸い上がらず、おかしいわねーと何度も言っていた。
なんだかやけにほっとする病院だった。ここ、トーキョー?という感じというか。すごいローカル感というか。
暮らしているトーキョーのことも知らない僕が行ったこともないアイルランドという土地について知っているわけもなく、首都はダブリンだろうか。それすら知らず、アドレスバーに「アイルランド」と打つだけで済むのだけどそれがされない。なんで検索しないのか自分でもわからない。どのような状態でいたいのか、わからない。
三鍋昌春『ウイスキー 起源への旅』を引き続き読んでいる。
麦のお酒であるビールというかエールを蒸留させたらだいたいウイスキーとのことで、どういった経緯でそしていつ、それが始まったのか。聖書にも言及されているという生命の水、アクアヴィテ、それはワインを蒸留させたもので、まずは飲用ではなく医療であったり祭祀であったりの液体として使われたという。その技術がどういった流れでエールに転用されたか。それはなぜアイルランドで起こったのか。そもそも本当にアイルランドがウイスキーの起源なのか。
そんなことが書かれているっぽくて、歴史さっぱり僕知らないからアレクサンドリアとか言われてもピンと来ないあたりは辛いのだけど面白く読んでいる。近々アイリッシュウイスキーを何本か買いたいなといま思っている。
で、アイルランド。位置取りもよく知らなかったのだけど、ありがたいことに地図が載ってて、ウェールズとイングランドとスコットランドが収まっているグレートブリテン島の左に浮かぶのがアイルランド島とのこと。わりと大きい。
で、その歴史。紀元前7世紀ごろにヨーロッパ大陸から英国諸島にケルト人が移ってきて、アイルランドはその中でもイングランドとかと違ってローマ帝国の侵略を受けなかったこともあってケルトっぽさを一番濃厚に残したまま文化を育て深めていったと。しかし!12世紀終わり、ゲルマン民族系のノルマン王朝に侵略され、属領化し、イングランドに支配されるのだった。とのことらしい。
ケルト人。ドルイド教。「オーク(ナラ)」という主権神の概念。そこにキリスト教伝播。わりと親和性あって受容。「わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠のいのちへの水がわき出ます」。ウシュク・ベーハー(生命の水)。エールを腐敗から守ること。蒸留させちまえ! つまりウイスキーとは、エールとキリスト教の邂逅であり融合の歴史であると。
そんなことがたぶん読まれつつある。アイルランド。
『若い藝術家の肖像』はいつ開かれるのか。
photo by Rodrigo Silva