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今日の一冊

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『本を贈る』(三輪舎)

2018年9月25日
そのあと、『本を贈る』を読んでいた、雨は強く降っていた。「本は特別なものじゃない / 笠井瑠美子(製本)」の昨日の途中から読み、紙の違いの話、職人の話、よくて、僕も印刷の場面とかに立ち会いたかったなそういえば、と思った、そのあと、ふと奥付を見てみたら、感動した、泣きそうになる奥付なんて初めてだった、左ページはよくあるというか通常の、初版発行年月、著者名、印刷、製本の会社、発行者、発行所、みたいな感じで、右ページがすごかった、印刷所名、それから、面付、点検、検版、本文印刷、付物印刷、紙積み、営業と、それぞれの担当業務と名前がクレジットされ、次が製本所で、営業、生産管理、荷受、束見本、断裁、折り、貼込、バインダー、くるみ、見本、仕上、発送、と同じように名前が付されていく、そして、校正、装丁・装画、編集・本文組版、と続いて、終わり。一冊の本の後ろに本当にたくさんの人生があるということがにわかに強く実感されそれが感動をもたらしたし、それにこの名前の多さ、多さというのは強さだった、わあ、という、盛り上がりがあって、奥付で踊れそうだった。これはいいなあ、これは普及してもいいんじゃないかなあ、映画なんてどれも細かくクレジットしているんだし、読み終えた本の後ろにいる人たちがたくさん羅列されているのは、とてもいいものじゃないかなあ、と思い、とてもよかった。
で、そのあとは「気楽な裏方仕事 / 川人寧幸 (取次)」だった、これがすごかった、冒頭から、なんだこの、これは! という素晴らしい労働の描写が続き、ずっと続いた。筆者は書店の仕入れ業務から始まり、取次への就職、倒産によって職を失ったので取次会社の設立、離脱、そして取次と出版社の立ち上げ、という人とのことだった。

個々の比較はここでは置くとして、私の場合はもう少し目先の問題というか、とやかく言うよりも手っとりばやく、本好きの人間を一人自由に、車で東京中を走らせておけば、それだけで解決する問題がある、あるべきところに本が収まっていく、というようなことをやっているのだと思う。人間が動き、働きかけることで、ささやかだが可能性を広げていく、あるいは、これから生まれる本のために可能性を開いておく、というようなことである。特別なこと、モデルになるようなことも何もしていない。取次の第一線ではなく私は周縁にいて、周縁から中央へ、または周縁にあるものを周縁的なままに日々、本を運んでいるにすぎない。
『本を贈る』(三輪舎)p.200,201

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