今日の一冊

2019.08.21
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####保坂和志『カンバセイション・ピース』(新潮社)
2018年8月21日
読書会の途中で、今晩はまた豚の生姜焼き、と思って、肉と玉ねぎを漬けこんでいた、それを閉店後、いろいろ済ませて、1時近くになっていた、焼いて、たらふく食べて満腹と思って帰って、遊ちゃんは僕が帰ったらたいてい起きて、それで話したりするのだけど、今日はずっと寝ていた、起きても本当にかすかで、寝ながら起きているぐらいの状態だった、シャワーを浴びてからウイスキーを飲みながら『カンバセイション・ピース』。庭の水撒きの場面、圧巻の40ページだった、これは本当にすごい、すごいし、この面白さがひたすら持続するのはいったいなんなんだろう、と思う。
私は水を撒いているあいだじゅうずうっとしゃべっていたわけだけれど、それはチビの小学生と大柄な女の子というイメージに上機嫌だったからだけではなくて、この庭に向けて私の記憶を送り返しているみたいなつもりになっていたからだった。あるいは綾子に私の記憶をしゃべることで、私が水を撒かないときに私の代わりに水を撒く綾子が、私の代わりに私の記憶を思い出すと考えているのかもしれなかった。子どもの頃から綾子が抱いていた、自分が答えをわからなくても他の誰かがわかっているからいいんだという考えが、世界との関わりについて何らかの真実を示唆しているように私は感じはじめていた。
保坂和志『カンバセイション・ピース』(新潮社)p.235
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