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滝口悠生『茄子の輝き』(新潮社)

2018年7月8日
そのあと、茄子の一本漬けを作ったときからチラチラ思っていたことだったし、トークイベントの告知が今日なされたことで後押しされた格好で、久しぶりに滝口悠生の『茄子の輝き』を棚から取ってきて読み始めた、ゆっくり、しかし確かに始まる感じあって、最初からなんというか充実感、というふうになる。一瞬でなる。すると3ページ目に「月曜会議では、たとえば日頃の業務体系における不備や問題点、OA機器や文房具、その他備品の取り扱いや設置場所について、社員の待遇面での改善要求、あるいは花見や歓送迎会、年末年始の飲み会の幹事選びなどが議題になった」とあって、なぜか、このセンテンスが目に流れ込んだその瞬間に、鼻がツンとなって、泣きそうになった、この小説でそのあとに流れた、そのあとと言っていいのか、あるいは以前だったりもする、流れた時間の全体や、いくつかの場面、居酒屋で、茄子が輝いている、島根の土産物屋で、店番をする、ことを語る、廊下で、観葉植物があり、歯医者があり、千絵ちゃんがあらわれる、うろたえて、煙草を吸う、会津若松で、酔いつぶれる、カーリングを見る、そういう、いくつかが、やってきて、泣きそうになった、泣きそうになって、とてもなにか豊かな心地になった。
この連作短編集を開くと、というか思うと、思い出されるのは雨の日の夜に営業中に読んでいたときのことだった、ことだったといっても何もないが、読んでいた、週末で、どこかの花火大会が、なんと決行されるらしい、と思ったそういう日だったしきっと花火の上がっているような時間帯だった、暇で、だらだらと読みながら、グーグルマップを開いて出てくる通りの名前を検索して、高田馬場のこのあたりか、と思ったりしていた、その夜を思い出す、花火大会、といえば今日、夕方、遊ちゃんとのやりとりの中で、花火大会のことが出てきていた、出てきていたというか出したのは僕だった、今日は各地で夏祭りがおこなわれているという、渋谷でも浴衣姿の人を多く見た、というから、どうりでフヅクエが暇なわけだ、さすがに花火大会はまだだよね、と言った、送った、花火大会なんて久しく行っていない、ということで、人が多くないやつだったら行きたいね、と僕は送って、そんな花火大会は存在するのだろうか、平日開催で、混雑していない花火大会なんて、あるのだろうか、と思った、夏、どこかで花火をしようねということを言ったら、言ったそばから、とてもそれをしたくなった、それが夕方だったか、『茄子の輝き』を取ったのは、このあとだろうか前だろうか。あとだったら、「花火大会」という発語が『茄子の輝き』を導いたというふうにも思うし、前だったら、あれ、逆か? あれ、わからなくなった。まあいいけれど、とにかく『茄子の輝き』は行ってもいない花火大会となにか結びついて記憶されているのかもしれなかった。それで今日、1年近くぶりに読みながら、会社の入っているビルの廊下の、大きい窓のほうからは新目白通りに出る道路が見え、反対の非常階段からは神田川が見えるというか、神田川側が見える、というあたりでまたグーグルマップを開き、ということは、このあたりだろうか、と思ったりしていた。

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