今日の一冊

2019.05.29
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####内沼晋太郎『これからの本屋読本』(NHK出版)
2018年5月30日
それにしてもまったくの、まったくの暇な日だった、手負いで制限のある営業で、そうだからこれはしばらくは長めの休暇みたいなものだ、謳歌しよう、のんびりやろうぜ、と思っていたのだがすぐに、その暇さに飽きて、呆れて、虚しくなって、僕はソファにどっと腰掛けて本を読んでいた、コーヒーを何杯も飲んだ、虚しい、と思いながら、手元の本によってなにか照らされるような相反した感覚もあり、読み、読んでいると、途中、フヅクエが言及されている箇所があり、それで僕はなんでだか、大笑いした、なんでだか、ここで説明されている素敵な店と、この今の状況の、誰もいない、ろくでもない惨めな今の状況のギャップみたいなものがおかしかったのか、ブワッハッハ、と笑った、笑ってからまた読み、そのあとに、
少し広げて考えるならば、たとえば書店の近くで長年営業してきて、本を買った人がそのまま本を読むために訪れ、ゆっくりとした時間を過ごしていくような飲食店は、広義の「本屋」の役割を果たしてきたともいえる。本を読むのが気持ちよく、また本を読む他の客を眺めていると、ますます本が読みたくなるような店だ。たとえば「本屋」になりたいと考え、飲食との掛け算を考えている人がいるとする。いろんな案を練ったとしても、最終的にはその人にとって、店で本を売らなくても、並べさえしなくても、書店の近くで営業し、その客に本を読むことを楽しんでもらえるような飲食店をやることが、理想の「本屋」の形だった、ということもあり得るはずだ。
内沼晋太郎『これからの本屋読本』(NHK出版)p.210,211
とあって、ほんとそうだなあ、と思った。と同時に、なにか書店にパラサイトできるような場所に出せばよかった、とも思った。出せばよかったというか、いや、いいんだけど初台で、いいんだけど、そうだよなあ、と思った。思って、読み続けた、誠光社の方をまじえた鼎談が、凄みがあったというか、もし僕がこれから本屋を始めたいと思っている身だったら、ドキドキする、自分はやめておこうかな、やっぱ俺みたいなやつには厳しいよな、と思ってドキドキしそうだ、と思った。
堀部 なので、数字の目標というより、どういう生き方をするか。数字は結果にすぎないんです。ビジネスとしてはこういう資料を作るのが当然ですが、僕は作りませんでした。この数字の通りにならなくても我慢できるか、どれくらい続けられるか、やっている状態にストレスがないか、ということを重視しています。
僕なら店を始める際、収益計算の前にソフト面の話をします。それは、価値観としてどんな感じのお店にしたいのか、品揃えはどうしたいかということです。結局一年やって、僕、ほとんどお金貯まってないんです。出版社としても本を五冊出しているんですが、お金ぎりぎりまでアイデアが出てきて、やりたくてやっちゃうんですよね。
でも、それで満足というか、それが財産になっています。
同前 p.233,234
やりたいことをやることそれ自体が財産であり報酬であると、最近考えていたところだったので、財産、という言葉が出てきてうれしくなった。
閉店し、あと少しだし、と思って外は小雨だし、ミックスナッツとバナナチップスをつまみながら読んでいったところ、読み終えた、最後の章は著者のこれまでの取り組みというか仕事というか人生というかの話で、仕事を作っていく物語が描かれていて、徐々に仕事になっていく様子に、すごいなあ、仕事を一から作りあげたんだなあ、かっこいいなあ、と思った。今日の売上は3450円だった。
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