今日の一冊

2019.05.01
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####津村記久子『この世にたやすい仕事はない』(日本経済新聞出版社)
ちくま文庫の棚を眺めていました。わあなんて格好良いタイトルなんだ、と思って手に取ったのが、津村さんの『君は永遠にそいつらより若い』という本で、その時は買わずに新宿の紀伊國屋を出て、雨が降っていた気がしているんですけど僕が天気を覚えているわけがないので、なんで記憶が夕立に襲われているのかわからないんですが、とにかくその日は家に帰って多分ラジオを聴いて寝ました。 当時僕は映画館で映写技師としてアルバイトをしていて、映写室で日下部くんに「『君は永遠にそいつらより若い』っていう本知っとる? タイトル鬼かっこよくね?」というようなことをセブンスターを吸いながら言って、日下部くんはラッキーストライクをとんとんしながら「あ、持ってるよ俺」とか多分言いました。煙草はもうやめました。じゃあ買お〜と言って買って、そしてそれを一晩か二晩か、いつもの本を読む速度よりもかなり早いスピードで読み終わり、読んだ人はきっと皆そう思ったのかもしれませんが、あまりにも自分の話で、一週間ぐらい『君は永遠にそいつらより若い』のことを考えてぼーっとしてしまうという、それはあまりない体験でした。 今でもあの自転車の鍵とか窓ガラスを割る脚とかゲームボーイとか、何度も思い出すんですが、回想にスコールが降ってくるような奴なので全然間違えて覚えているのかもしれません。 津村さんの本を見かけるたびに、読んで大丈夫かなぁ、ある程度の期間ぼーっとしちゃうぞ、と慎重になります。タイムカードが埋め尽くす表紙を見て、わ、かっこいい、文庫も出てるのか、でもデカイ方が好きだ、あ、ぼーっとなるかも、まあいいか、と思ってデカイ方を買いました。自転車を漕いで家に帰りました。(山口)
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