今日の一冊

2019.04.03
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####ジャック・ケルアック『スクロール版 オン・ザ・ロード』(青山南訳、河出書房新社)
2017年4月3日
昨夜遅く、東京都渋谷区初台の路上で、帰宅途中の男性(31)が『スクロール版 オン・ザ・ロード』を読破したのを発見した帰宅途中の男性(31)が110番通報したところを現行犯逮捕されたというおそらくちょうど同じタイミングで僕もまた『オン・ザ・ロード』を読み終えて驚いていた、なぜなら冒頭のあたりでページ左端を使って書かれる注で540ページの訳注にて云々みたいなコメントがあってこういうのを僕は知りたくないタイプの人間のためこの小説が540ページくらいのところできっと終わる、400ページに入ろうとしている、400まで来たら本当にあとすこしだな、と思ったら392ページで突然終わった、たしかに391ページで少しだけ予兆は感じたのだけれども、開いたところページ半ばでこれまでずーーーーーっと続いていた文字が途切れ、この本で初めて見る空白が、そこにあった。
やつはわざと車をジグザグに走らせてみんなをからかった。インディオのように運転した。レフォルマ大通りの円形のロータリーに入ると、八本の道が集まってくる真ん中をぐるぐる回ってあらゆる方向から突進してくる車を相手に左だ、右だ、行き止まりだ、とかわし、わめき声をあげて楽しそうに飛びはねた。「こういう交通こそおれの夢よ!みんなが勝手に走ってな!」救急車が弾丸のように走っていった。アメリカだと救急車はサイレンを鳴らして車の群れのなかを縫うように走りぬけていくが、世界に冠たるフェラヒーンのインディオの土地では救急車は街中を80マイルで突っ走る。みんながさっとよけるなか、一瞬も停まらず
ジャック・ケルアック『スクロール版 オン・ザ・ロード』p.392
一瞬も停まらなかった小説が「一瞬も停まらず」で終わった!なんてかっこいいの。そして左のページには「付録」とタイトルがありこうある。
スクロール原稿の最後の数フィートは見当たらない。スクロールの末尾の手書きのメモには「犬が食った [ポチキー、犬]」とあるから、ルシアン・カーの犬のポチキーがエンディングは呑みこんでしまったのだ。(…)
ケルアックの1951年4月以降の原稿、ならびに刊行された小説から逆に作業してみると、失われたエンディングは以下のようなかんじのものだったのではないか。 同前 p.393
そして次のページで数行巻き戻したところからまた再開される。なんだか僕はとてもゾクゾクとしたというかかっこうがよかった。生々しいみたいなところなのか、それとも5000kmくらい一瞬も停まらずに走ってきたところ急ブレーキを踏まされて、検問所で、止まって、また急発進みたいな、そのストップ&ゴーのテンポがよかったのか。ともかくよくて、興奮して読み終えた。結局402ページで小説は終わった。405ページからは先ほどのハワード・カネルによる「こんどは速く ——ジャック・ケルアックと『オン・ザ・ロード』という書」という解説が始まる。これもいいタイトル。こんどは速く。とにかく全部。
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