本の読める店

今日の一冊

Entry 0313

ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(都甲幸治・久保尚美訳、新潮社)

会社に行くのが嫌になってしばらくのあいだ休んでいた。最初は風邪とでも言ったのだろう。昼間、5階の部屋の窓際に置いたソファに包まれるように座って呆然としながら過ごしていたような記憶もあるがそれはでっちあげた「陰鬱な日々」の像なのかもしれなくて実際は「こんなことをしていても意外に元気なものだな」と思っていたかもしれないしさらに「でもせめてポーズくらいは取らねば」と思ってそういう顔をしていたかもしれない。そしてそれにがんじがらめになって身動きの取り方がわからなくなっていたかもしれない。
職場放棄をしていた日々で覚えている夜は「いつ死ぬか本当にわからないし今死んだら本当に後悔する」と焦燥しながら家から一番近かった啓文社の岡山本店に行って駐輪場に原付きを停めていたその場面だけで、並んだたくさんの自転車が店内からあふれる光によって照らされていた。その時に買ったのが『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』だったのだろうか。読んだ記憶はもちろんあるがこの時期の記憶とは何も結びつかない。読書の記録によれば同時期に読んでいたのは羽生善治の『大局観』でこの夜に買ったのはこちらかもしれないしありそうな選択だ。
「短く凄まじい人生」だったか「大局観」だったか、あるいは一緒に買ったのか。ともあれひと月後の4月には退職を申し出て6月には店を始めていた。2011年のこと。

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