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読書日記(126)

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メールマガジン「読書日記/フヅクエラジオ」 | fuzkue

3月3日(日) 

あれ!? おはよう!?
と言って起きたが家には誰もいなかったし一時間前に遊ちゃんが仕事に出て行って僕もいってらっしゃいと言ったからそれはそのとおりで、雨が降っていて歩いていると歩きながら考え事をしていると歩くことはけっこう考えることに向いているなと昨日のソルニットの影響をもろに受けて思って、考えていた。店に近づいたところで声が聞こえて見るとお花屋さんのおじさんであいさつをして「今日は歩きなんだ」と言われて「雨なので」と答えて店の建物に着くと一階の床屋のおばちゃんと目が合っておばちゃんは扉を開けて顔を出して「今日は歩きなのね」と言われて「雨なので」と答えて店に着いた。

味噌汁をこしらえることをコーヒーを淹れるよりも先におこなった。大根人参白菜、このあたりはベースだろうか、白菜はわからない、最初はキャベツだったし、わからないが今回は鶏肉とタラ、きのこいろいろその他、そういう味噌汁だった。
ショートブレッドも焼こうかと思ったがやると慌てそうだからそれは山口くんが来てからにすることにしてぼーっとしていると鈴木さんから連絡があり店の仮オープンが10日に決まったこと、相談したいことがあるのだが今週どこか時間がないかということが言われ「今週」と思い「ないな」と思い、そのあと、「今日とか? 今晩とか?」と思った。というのは今日は夕方から山口くんだ、週末は基本的には僕も店を離れない、それは忙しい確率が極めて高いからだ、しかし今日は違うかもしれない、雨だ、そして昨日が暇だったからだ。まったく困ったものだと思うが体感として参照できるものを僕は引き続き前日しか持たない。昨日のことでしか考えられない。おとといが今年一番忙しい金曜日で昨日が今年一番暇な土曜日だった、じゃあ今日も暇な日曜日になってしまうのだろう、という。
それで、今晩もし抜けられそうだったら今晩行けるんですけれどもさすがに急ですかと聞いたところ夜も作業をしているから大丈夫ということで「そうだよな」と思って、オープンまで一週間だもんな、と思って、僕は店が始まろうとしているところを見るのを単純に楽しみに思っていてどうやらずいぶん見てみたいらしかった、そうじゃなきゃわざわざ行かないし行きたいと思わないしずいぶん行きたいと思っている。

それでゆっくりで、やっぱりゆっくり、と思って1時半頃に「今日は(昨日も)暇なので眠りそうなのでそういうわけにはいかないので今日の具だくさんのお味噌汁の定食のおかずのちょんちょんちょんを紹介いたしますと今のところは人参しりしりみたいなやつ、うずらの黒酢の煮玉子、春菊胡麻和え、ごぼうと舞茸の山椒の実とかで炒めたやつといった面々です。」とツイートして直後に「わっ」となっていったん満席になった。1時半で見定めるな、ということでもあるがしかしスタートとしては暇だったことは間違いないから仕方がなかったが満席といっても忙しいということでもなく淡々と手と足とを動かして頭ももちろん動いていて山口くんが来た。
山口くんの動きを見ていると次の動きについての意識が希薄に見えてあとでそのことを話そうと思いながら業務を遂行していて僕はじゃあ何をどう意識しているのだろうと思ったらたとえばサンドイッチをつくっているときはサンドイッチのことは考えていないで次の動きのことを考えているしたぶん5手先くらいまでは頭にプールさせている。同時に店の状況を周辺視野とかで見ながらメニューの紙をパラパラと見ている人がいたりしたらオーダーがこのあとある可能性というかこちらを向いて「気づいて」ということが起きる可能性が高まるので周辺視野ヒートマップのなかでもそのあたりが赤くなる、そして鳴っている音を聞いている、あたためなおす小鍋の中の味噌汁の音や回っている電子レンジの音に注意が行っている。つまり注意をひたすら分散させて集中しているみたいなそういう状態が僕が立っている状態でそれはもっぱら目の前の手の思考は手に任せていることによっているということだろうしそれはただ繰り返しがそうさせる。雨が降り続いていて屋上にあがって煙草を吸う。
夜で、ドコモタワーが紫色に光っていて周辺にも高いビルがあるが電気はほとんどついていなくて景色全体が白っぽくけぶっていた。
8時を過ぎてお客さんも減っていくような状態になり落ち着いて、よかった、悪くない日曜日になった、と安堵し、そして落ち着いたので出ることにして、しかしちゃんと働いたので体がもう疲れている、行く前から後悔している、今からときわ台に行ってとか、バカなのか、というような。それでも、行ったらきっと「あー楽しかった」と思うと思っているから行く。それで電車に乗って『クラフツマン』を開くと面白い。ここ数日はもっぱら『クラフツマン』になっていて楽器演奏者、料理人、ガラス吹き工の話が書かれている、体を高度にコントロールすること。
高度にコントロールされた僕の体はときわ台で下りて人の流れになんとなく任せたところ「あれ、こんな駅だったかな」というところに出た、北口に出るつもりが南口に出たらしく、北口とか南口というものがあることをほとんど認識していないで動いていた、それで踏切を越えて北側に出ようと踏切待ちをしていると雨が降っていてテールライトをともした車が何台かあって寒くて息も白くても春になりそうな気配はなにか感じられるその光景全体が突然「大学時代の何か」を喚起させた。それがなにかはわからなかったし湘南台に渡るべき踏切があったかどうかも定かではない。でもこの中の何かがあるいは組み合わせの何かが大学時代の何かの記憶と結びついたらしくて見慣れない町というのは現在よりもむしろ過去とか記憶とかと近しい。

それでビールを買って鈴木さんの物件のところに入っていく、本棚や椅子やテーブルがたくさん並んでいてたしかにそれはもうほとんど店だった。よくやったなあ、とセルフビルドの数々を見ながら思った。それで、そのあれこれを見させてもらいながら勝手なことをあれこれと言い、相談したいことは内装とかのことではなかったし立ち話もなんだったし鈴木さんの今日の作業もまあ終わりにしてオッケーということだったのでお腹も減っていたからどこかに入ることにして鳥貴族がすぐ近くとのことで、行ったことないし面白そうだし鳥貴族にしましょう、となり入る。ビールをお願いしてからしばらくひたすら話していた。一時間くらいしてから食べ物を頼んだ、一時間は言い過ぎか、タッチパネルは愉快、ぽんぽんぽん。ポテトフライと唐揚げと、みたいな感じでぽんぽんぽん。それで鈴木さんの店の話をひたすらしていた。考えないといけないことが山ほどあって当事者は大変だろうが第三者はただ楽しいしどうかうまいこといってほしい。うまいこといくためには本当にお金は大事だなと改めて思った。事業にとってお金が生命だった。元気であればこそできることがある。オープンまでにどうなるのかオープンしたあとどうなるのか楽しみで終電の時間も近づいたので12時なるところで散会し、帰った、眠かった、『クラフツマン』を続けた、行き帰りの電車の時間の読書が僕は楽しくうれしい。眠気が深まっていって、そば食って帰った。ふと「野球の記事を切らすことなく読み続けたい」と思った時に、「週刊ベースボールonline」に登録すればいいのでは、と思い、そうしようとしたが登録のところでつまずき、諦めて家に帰った。
遊ちゃんと鈴木さんの店の話、遊ちゃんの仕事の話をし、その流れで遊ちゃんにマーケティングの基本を教わった。遊ちゃんは最近教わった。パワポの資料を見ながらいろいろ説明してくれて、きれいな資料で游明朝だった。とても楽しく、マーケティングミックス、4つの「P」、コアターゲット、STP。フヅクエの場合はこうだねとかこうなのかなとか、ああだこうだと、やたらに楽しかった。

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この週に読んだり買ったりした本

トーマス・ベルンハルト『凍』(池田信雄訳、河出書房新社)https://amzn.to/2SbLTvx

レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』(ハーン小路恭子訳、左右社)https://amzn.to/2NvnQ54

ワタナベマキ『旬菜ごよみ365日 季節の味を愛しむ日々とレシピ』(誠文堂新光社)https://amzn.to/2tIORJ2

庄野潤三『明夫と良二』(講談社)https://amzn.to/2tvNmhA

ダニエル・ヘラー=ローゼン『エコラリアス 言語の忘却について』(関口涼子訳、みすず書房)https://amzn.to/2CjwtdN

リチャード・セネット『クラフツマン 作ることは考えることである』(高橋勇夫訳、筑摩書房)https://amzn.to/2Tnw1pn

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