本の読める店

「お前の存在が間違っている」

Entry 62

冬休み初日なんてみなさん用事あるのだろうし、であるとか、仕事納めだし、であるとか、クリスマスだし、であるとか、イブだし、であるとか、天皇誕生日だし、であるとか、なんせ師走でみなさん忙しいし、であるとか、そもそも2014年だし、であるとか、なんていっても21世紀だし、であるとか、理由をつけようと思えばいくらでもつけられるこのたいへん暇な状況に対し、今のところの僕は特に何か働きかけることもせず、というか先日書いたように「今年は実はプレオープンだった」という、既存の認識を大幅に作り替える荒技によって、今年に関しては何も気にしないということを決め込んでいる。

「来年から本気出す」

つぶやけばつぶやくほど虚しく転がるこのフレーズをそれでも何度となくつぶやいてみせ、「OK、そうそう、だからOK。今年はもう終わり終わり、はい終了!」とうそぶいては白目むき口から泡を吹く。

そんな日々を暮らしているなかで先日来てくれた友達と、閉店後に店でダラダラ話す機会があった。彼はミルクティーを飲み、僕はビールを飲んだ。
彼は立派な企業の優秀な営業マンだからきっと何か有用なことを教授してくれるに違いない、あるいは何かを売りつけられるか……と思っていたら、店の雰囲気はいいしコンセプトもあれだし出してるものも間違ってない感じするしここはきっと大丈夫でしょう、といつになく普通に誉めてくるから、こいつは嘘は言わない人だし、そう言われて悪い気はしないよね、とまんざらでもない顔を僕はした。
ただ、と彼は続けた。ただ、お前の存在だけが間違ってるんじゃないのか、せっかくの空間をお前のその格好が、存在が、ぶち壊しているのではないか、と。

その日は今年一番の寒さという日かどうかは知らないけど12月後半の普通に寒い日で、僕はなぜか半袖のTシャツ姿で働いていた。洗濯前日で長袖が見つからなくて。で、下はいつも通りにデニムのハーフパンツで、足元は短い靴下とビルケンのサンダル……

「自分でも「俺の体はどうしちゃったんだ!?」と思いながら結局ズルズルとこの格好できてしまったのだけど、今年は本当に寒くない。いや寒いは寒いのだけど、ハーフパンツっていう点は寒さに関係してない気がするんですよ。むしろ寒いのは上の方で、胸のあたりとか冷えるなーとか、マフラー巻かなきゃなーとか思うんだけど、あと手袋とか。でも長ズボンを着用せにゃ、みたいな気には一つもなれなくて。
先日も試してみたんですよ、関内に行った日で、海近いし風強いしで、外でつったって、「俺の今感じている寒さはどこに起因する寒さだ?」というのをじっくり感じてみようと。寒いは寒い。確かに寒い。だけどその寒さは腕や胸や顔が感じているもので、と、意識を下半身に集中させてみる。冷たい風が当たってはいる。しかしその冷たさは心地の悪い寒さを僕の体に与えはしない。やはり、この寒さはハーフパンツに由来するものではない!と、その日結論がくだされた。しかしその日に会った友人にも言われた、君の格好は景色として有害である、と」

と僕は答えた。

「店主の存在が間違っている」

これはさすがに友人でない限りなかなか言ってくれない類の意見だ。忌憚のない意見ってこういうものだよねという点ですごくありがたかったし、「それちょっとわかるわ、薄々そんな気もしてたわ」という共感もできる指摘だったので、まあその点についても来年よく検討するわ、善処します善処します、と言った。

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