本の読める店

読書日記(83)

Entry diary83

4月28日(土)

朝、準備をしながらDAZNで野球を流していた、大谷翔平がDHとして出場し、田中将大が先発する、そういう試合だと思って、それは見たい、と思い見たところ、ヤンキースの先発は田中ではなくセベリーノだった。速い球を投げる。見ていたら、大谷の打席になり、見ていたら、ホームランを打った。笑った。

ゴールデンウィーク初日。まったくの暇な一日となった。本はまったく開かなかった、触りもしなかった。いくつか「じゃあ今日やっちゃうか」という仕込みをしながら、ひたすらInDesign遊びをしていた。面白くてしかたがない。11時過ぎには誰もいなくなり、しかしずっと、ひたすら、InDesignをいじっていたら飯も食わないうちに2時になった。自分の愚かさを呪った。

4月29日(日)

今日もゆっくりした始まりで、最初のうちに来られた方にサンドイッチを出したところ、分厚い本の読み始めだということが見て取れて、なにか、感動した。この本を読むんだと思ってこの方は来てくださり、そして読み始めた。なにか、素晴らしい瞬間を目撃した感があった。感動した。
ぽやぽやと仕事をしながら、またInDesign作業をしていた、去年の10月分と11月分の日記を流し込んで、あれこれ調整していた。
結局、最終的にはわりと悪くない感じに着地した。わりと疲れ、眠くなり、ショートブレッドを焼いて、飯をたらふく食って、気づいたら3時近くになっていた。慌てて帰った。

昨日は珍しいことに一日一度も本を開かない日だったし、今日も同じように過ぎていった、触りもしなかった。寝る前、多和田葉子を開いた。面白く、すこし読んだら眠くなり、眠った。

4月30日(月)

寝ても覚めても。InDesignを触りたくて仕方がなくて鬱陶しい。が楽しい。楽しすぎて頭がどうにかなりそう。常に、「あれ? もしかしてあれをこう設定したらああなるんじゃないか?」みたいなことを考えている。なにをそんなに効率化したいのか。したい。したくてたまらないらしい。寝ても覚めても。

今日は祝日だったがトンプソンさんが入る日で、僕は僕もいようか、どうしようか、前夜4時まで悩んだが「いつでも行きます」ということにして、わりと常にスマホの通知を見る係になった、つまりSOSが発せられていないかどうか、注視。席管理に使っているAirリザーヴのページを見ながら、お、今は満席なんだな、とか思って、完全に気もそぞろで暮らした。しかし連休中のこの半休というか待機は、きっと体力的にはとても助かる、ありがたい、と思いながら、気もそぞろで暮らした。気もそぞろながら、当然ながらInDesignを触っていた。ぐんぐんと楽しい、しかしなんだかずっと曖昧な気分で、困った。結局特にSOSが発せられることなく、夜に店に行って交代した。そこそこの休日という感じだった、手が空いたら僕は相変わらずInDesignを触っていた。そうしたら気づいたら閉店時間を迎えた。

寝る前多和田葉子。面白く、すこし読んだら眠くなり、しかし寝付けなかった。腕が気持ち悪い。

5月1日(火)

眠っているのが楽しいが起きた、店に寄り、ひきちゃんと歓談し、皮膚科に行って薬をもらった、店に戻って仕込みをいくつかした、済んだので出て、カレーを食べたくなって近くのネパールだったかインドだったかの屋さんに行き、ダルカレーとナンを食べた、おいしかった、腹いっぱいになった、帰宅し、原稿仕事的な仕事をしていた、せっかくなのでInDesignで文字組みというのか、フォーマットを作り、それに流し込んで文字がはみ出さないかどうか、チェックしながら進めた、おおむね書けたので満足したが眠かった、外はいい天気だ、風がいい調子で吹いている、ビールを飲みたいが飲んだらすぐに眠る気がする、少し眠りたい、外に出る用事がある。

20分、うとうとし、出た、電車に乗った、車中、多和田葉子を読んでいた、面白い、もう少し読んでいたい気もしたが、そういうわけにもいかなかった、外苑前駅にはすぐに着いた。改札のところで友人2人と落ち合った、僕はどちらも久しぶりだった、去年も同じ顔ぶれで野球を見に行った、大学時代に一緒に暮らした人たちだった、路上で焼きそばとビールを買い、ビールを開けた、夕方5時、ビールを飲みながら歩くのにはうってつけの気候、空模様だった。
明治神宮球場。同じ顔ぶれなので、と思い、去年とほぼ同じ席を取った、去年よりは数段前の席になった、そうすると見晴らしがとてもよかったというか、近かった。
ヤクルト対中日というカードについての思い入れはなにもないというか、とても見たかった顔合わせみたいなものではひとつもなかった、野球を見られれば、投げ、打ち、駆ける、その運動を見られれば、なんでもよかったわけだけど、それにしても地味なカードだった、そんなこともなかった。谷元、大野、工藤、大引、鵜久森。いくつもの、元日ハムの名前。
しかし球場で見る野球は、毎度思うが、勝ち負けが遠ざかる、スタッツみたいなものも遠ざかる、目の前での運動がすべてで、ただそれが面白い。そのなかで、四球というのは本当によくないものなんだなということは、これも去年も思っていた気がするが、テレビで見ていたり、あるいは一球速報で追っていたりするときとはまったく違う強さで、思う。一球一球の間合いがすべて、球場にいると、こちらの時間と同期する感じがあり、一球ずつの時間を僕たちもはっきりと生きている感じがある、そのなかで、投じられる一球はすべて幾千もの祈りとともにある。祈りの裏切り、いや裏切りはなにか違うというか強すぎる、祈りの非成就、その積み重ねが四球で、だから四球は見る者を、祈りを、祈りの時間を、過去を、傷つける。そんな感じが体感としてある。

外で飲むビールはうまいし、すぐに酔っ払う、3杯飲み、もうやめておこう、眠くもなりそうだ、スコアは4−2でヤクルトが勝っている、リリーフで上がった近藤がテンポのいい気持ちのいい投球を披露、今日はヤクルトが勝つのだろうか。何度も、チアリーディングの集団というのか、ダンスの集団というのか、がグラウンドに出てきて、ボンボンというのかポンポンというのか、を持って踊っていた、スクリーンに映し出されるその姿を見ていると感動する、笑顔に感動する。作ることが必須とされている笑顔がたしかに作り出されていることに感動する。その顔のまま踊る姿に感動する。見ながら、想田和弘の次のやつ、『ザ・ビッグハウス』を早く見たくなった。
素晴らしく面白い試合だった。4−2から中日が逆転して、4−6になった、8回、バレンティンが期待の新人でこれまでずいぶん立派に活躍している鈴木の速いボールをなんというかしばく、みたいな、そんな形容が似合った打ち方で、ぶっ叩き、すごい打球をスタンドまで飛ばした。説教みたいなスイングだった。それで5−6だった、そして9回、中日は守護神の田島で、ランナーが一人出た、これで一番の山田哲人まで回ることが決まった、それだけで十分に大満足の展開だった、しかし山田は申告敬遠で歩かされた。二死、一二塁。代打で荒木が出た、その次は青木宣親だった、青木は今日試合前に1000試合出場のセレモニーで金一封などをいくつかもらったりしていた、お祝いされていた、その男に打席よ回ってくれ、と、全員が思っていた。すると見事に荒木が四球で出た。二死満塁。10時をまわった。鳴り物がやんだ。一打逆転サヨナラの場面で青木、という、これ以上ない状況が生まれた。一球一球を全員がかたずを飲み込んで、見つめた。僕はビールをもう一杯買った。青木は3球目あたりを打ちそこね、ショートゴロ、二塁封殺、試合終了。中日ファンはほっと胸をなでおろし、ヤクルトファンは天を仰いだ。天を仰ぎながら、この状況を見られたこと自体がすでに報いであることを感じていない者はいなかった。みな楽しんだ。

球場を出て、買って2球で青木が倒れたためまだビールは残っていた、それを飲みながら千駄ヶ谷の方向に歩いていった、新国立球技場が延々と目の前にあった、でかかった。ビストロコンカに入った、ワインを飲み、いくらかつまんだ、どれもとてもおいしかった、魚介のおかずの盛り合わせであるとか、イカスミで黒くしたというソーセージとか、とてもおいしかった、またゆっくり来てみたかった、飲み、食べながら、歓談した、みな、立派に生きているなあ、と思った。いい時間だった。
一人は千駄ヶ谷駅の、一人は代々木駅の、一人は南新宿駅の電車に乗るということで、道の途中途中で別れていった、酔っ払っていた、頭が少しズキズキした、夜風がやさしくその額を撫でたが、頭はやはりズキズキした。

5月2日(水)

起きると、眠っている時間は本当に気持ちがいいことを実感して、できたら、眠っている最中もその気持ちよさを実感したい。終わりかけしか実感できないのは、もったいない。店。夜から天気は崩れるとの由。
ぽやぽやと働きながら、チーズケーキを焼いたり、シロップを作ったり、スープを煮込んだりしていた、空いた時間は原稿の枝葉切り作業をしていた、整っていく。枝葉切り作業はInDesign上でやっていた。きれいで気持ちがいい。
ゴールデンウィークだと思っていたが、普通の平日だった。夕方からなんとなく慌ただしい感じになり、よかった。今日は、『夜のみだらな鳥』を読み始めた方の場面に遭遇した。勝手に楽しい気持ちになり、お、夜のみだらな鳥。がんばってください。とヘラヘラしながら声を掛けた。

5月3日(木)

休日としてはまれに見るほどの暇な始まりになり、「本当に暇だ」と思った。それで今日はECサイトというか、オンラインストアだった、それからTシャツだった。BASEのアカウントを作り、ふむふむとか言いながら、売るものもないのにwww と思った。STORESのアカウントは数日前に取っていた、STORESかなと思っていたが、月額使用料や手数料を考えたらBASEの気がした、たくさん売れるならSTORESだったが、どうせたくさんは売れなかった、スプレッドシートで計算してみたところ売上月30000円くらいが分岐点だった、それにしても僕は今どうやらとても何かを売りたい。それで、というかそれでではない、これは一週間前くらいに思い立ったというか、友人が店でTシャツを売ると言っているのを聞いて、俺もやろ、と思った、というそのまんまだが、一週間前にそう思った、Tシャツのことを考えていた。最初はロゴTだろうか。フヅクエのロゴってどれのことだろうか、それはもちろんfuzkueというやつだろう、サンディニスタみたいなフォント、なんだったっけか、Constantiaだった、そのfuzkueというやつだろう、そのTシャツはかっこいいのだろうか。
結局、ゴールデンウィークで初めてやっとまともないい休日になった、よかった、たくさん働いた、たくさん仕込みもした、だからたくさん働いた。よかった。ちゃんと疲れた。へとへとになった。
へとへとになって座っていたところ閉店間際の11時半ごろ、そうだ、ポテサラ作ろう、と思い立ち、ポテサラを作り始めた。白いんげん豆を入れてみたところほっくりした感じでやさしいいいポテサラになった。満足して帰った。

夜中、Tシャツのことがわかってしまった。これはめちゃくちゃ売れるんじゃないかwww みたいなTシャツのデザインができてしまった。テンションが上がって大笑いした。
いくらか多和田葉子読んで寝。

5月4日(金)

眠かった、起きた、イチローのニュースを見た、読んでいたら涙がこぼれて、驚いた。知らず、勇気みたいなものをもらっていたのかもしれないなあ、と思った。ありがとうと伝えたい、みたいな気持ちになっていた。
天気がよかった、春夏のズボンを出した、寸足らずのズボンだった、パドラーズコーヒーにコーヒーを飲みに行った、行列でもできているかと思ったら意外に落ち着いた状態で意外だった、タイミングがよかっただけかもしれなかった、カフェラテを頼んだ、外の席は誰もいなかったのでラッキーと思った、たくさんの植わった植物が、デッキというのか、に豊かな影を映していた。いくつかのレイヤーがあって、淡い光の玉みたいなぼんやりしたものをベースにして、手前のくっきりとした植物の影があって、それらの動きは必ずしも連動しないで、ゆらゆらと揺れたり、止まったりしていた。海面を眺めているような、いつまで見ていても飽きないような映像がそこにはあった、見とれた。

家に帰ってアンチョビとキャベツのパスタを作った、人参のラペと一緒に食べた、とても久しぶりにパスタを作ったし食ったのも久しぶりだった、ちょっとゴワゴワした感じになった、これはオイルが足りないのだろうか、わからないが、味はじゅうぶんに美味しかったので満足した、そのあとは日記を読み返していた。今週は本当になんというか気がそぞろで、散っている。「そぞろ」が「漫ろ」ということを初めて知った。漫然。
眠くなった。食って、読んで、寝て。昼寝をいくらかして、店に寄り、大丈夫そうで、交代までまだ時間も少しあったのでドトールに行き、引き続き日記を読んでいた。2016年10月16日の記述を読んでいたら胸が熱くなった。クライマックスシリーズ、日ハム対ソフトバンクの日だった。ルーキーだった加藤が先発して初っ端からたくさん点を取られて、しかし打撃陣が奮起して逆転して、最後は大谷が165キロを連発しながら締めた試合だった。日本シリーズへの進出を決めた。そのとき僕はフォークナーの『八月の光』を読んでいた。全体に、なんだかグルーヴがあった。読み返すのは、面白いものだった。

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