『東京の夜のよりみち案内』

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なんとなく予感がしたのだ——今日はきっととても暇だろうと—— その予感を正確になぞるような形で現実が進行している。極めて暇であるため、そして必要な仕込みは昼のあいだに真面目におこなわれてしまったため、さらに普段ならば途中で手を止められないし場所も取るので営業中はやらないショートブレッドを焼くことまで——「今日なら焼ける、いや、焼けてしまう」——という英断がくだされ実際に無事焼かれてしまったため、この男はいったいどこまで勤勉なのだろうと我ながらに深く感心した昼のひとときを過ごしたため、それ以降はまったくなにもやることがないため、ひたすら本を読んでいたら——一冊読み終え、また一冊読み始め——本読むのにも飽きたし眠い。コーヒーはもう5杯目でだんだん胃のあたりが疲れてきた。そのためブログでも書くことでもしようかと思ってこのように今打鍵を始めたのだけど概要としては掲題の本でご紹介いただきましたということで掲題の本の内容はAmazonの内容紹介によれば——
仕事帰り、大人女子 東京の夜のガイド決定版!

仕事が早く終わったとき、今日は癒されたいという時、まっすぐ帰宅しないで、ほんの少しだけ「よりみち」してみませんか。
——— こんなコンセプトを基に、素敵な写真と文章で、オトナ女子の為に夜の東京ガイドを作りました。 掲載ジャンルはアート鑑賞、手作り体験、ごほうびスイーツやヘルシーなご飯、かわいいお花や服、雑貨、星空観測やナイトカヌーまで! 東京には、夜をすてきに過ごせる場所がたくさん。まっすぐ家に帰るにはもったいない! そんな気分にさせてくれる本です。
掲載箇所は82スポット、全てに実際に足を運んで取材をし、 穴場スポットも満載。地区別掲載で詳細なアクセスガイド付きです。読んで眺めるだけでもこころが華やぐ1冊です。 東京の夜のよりみち案内 | 福井麻衣子 |本 | 通販 | Amazon
夜の、よりみち——
夜のよりみちと言えばで思い出すことがあってそれは去年の——いや、その話の前に——先日初台に磯丸水産がオープンして煌々とやたら強烈に攻撃的に輝く照明が僕はとにかく今のところは気持ち悪くて——どうせすぐ慣れるとも思っているが——24時間営業とか初台でやっても人入らないでしょ早く撤退してくれないかなと思っているのだけど—— 遅い時間もやっているということは助かることであり、といっても閉店後に飲みに出る習慣もないので助かるもなにも本当はないのだけど——撤退を望みながらどこかで「いつか終わったあと飲み行こ」とかるんるん思っている自分がいるらしく、なんともいえず恥ずかしい。それはともかく初台にはそんなに多くの居酒屋があるわけでもないし需要もきっとそんなに多くあるわけでもないのだろうからそのそんなに多くはない周辺の居酒屋においては磯丸水産のオープンというのはもしかしたらけっこうダルい事態というか、少なくとも人々の好奇心みたいなものが一巡するまではわりと単純に売上に影響してきたりするのかなと想像するのだが実際のところはどうなのかは僕は誰とも交流がないので知らない。僕が交流のあるのは下の床屋のおばちゃんくらいで聞くところ床屋さんの客足に影響はないようだ。ただ換気扇の出口の位置が低いところにあるらしく道になまぐさい匂いがほらするでしょうとは言っていて僕は鼻が詰まっていたのか「あれ僕全然わからないっすね」「わからない?」「あれ?わからないwww」「えーすごいにおいするわよ魚の」「えーわからないwww ——あッ!におったにおった!」「でしょ〜するのよ〜」「ほんとだにおったーwww」「それじゃあお稼ぎください〜」と言われて僕は「稼ぐ稼ぐ〜稼ぎたい〜www」と思いながら喜ぶ、そんなことを昨日Twitterに書いたところ、——いや、その話は今はやめておこう……ともあれ磯丸水産がオープンして他の居酒屋のことを考えたときにそういえばフヅクエという店はどういう店とバッティングするというかパイを取り合うのだろうかと考えて、——いや、その話は今はやめておこう……ともあれ今日は僕が本当に無気力なのは暇であることが原因であると思っていたのだけどどうやらそれじゃないらしくて昨日まったく覚えのないどこかの機会に右手の中指の先端というか指紋があるあたりにうっすらとした切り傷を作っていてそれが今日になってじわじわと痛く、それだから何かしら手を用いて作業する——ほとんどの作業が手を用いておこなわれるのだが——そのたびに痛いので、痛いとダルいので、ダルいのは嫌なので、と辿っていくと最終的に——終わりというものが本当に存在するならば、ということだが——「作業するのは嫌なので」というところに落ち着き、つまり今日の僕はそれがために無気力なのだ、と思い至った。そこで絆創膏を指につけてみた、するとどうだ、それまでの鋭く同時に鈍い痛みが絆創膏によって驚くほどに軽減され、そうしたらやる気——のようなもの——もみるみるうちに回復した。だから僕はいつだって臨戦態勢で「さあて、今日も身を粉にして一所懸命働くぞ!」と思い続けてもう7時間ほどが経過するのだが、——わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか——いっこうに仕事はやってこない。そうこうしているうちに昨日からの——いや、その話は今はやめておこう……