本の読める店

「カフェと喫茶のニュースタンダード50」(『Hanako No.1099「私の好きなカフェ。」』)

Entry blog fuzkue295

僕が「カフェ」という拡張子というか括り方からできるかぎり距離を置こうというか少なくとも自分からあまり近づかないようにしていたのにはいくつかの理由がある気がするけれど、ひとつはそんな土俵で戦おうとしたら超大変というか、なんかすごい激戦区というか、消耗戦というか、今浮かんだイメージとしては日本三大奇祭の一つらしい岡山の裸祭りで。
たいへん寒い夜、お寺のなんか小高いところで、まわし姿の男たちがひしめきあっている。超ひしめきあっている。これでもかっていうくらいひしめきあっていて、いいポジション取ろうとすごいがんばっている。それで時間になると真っ暗になって、高いところから宝木が2本落とされる、それ奪取してどこかまで走っていくんだっけな、それした男がウィナーみたいな。けが人も毎年きっと出るだろうし死者とか出てもおかしくなさそう。つわものたちは実は個人で戦わずに徒党組んでいるという話を聞いたことがある。
そんなところに一人で立って戦って勝ち抜こうなんて、なんていうか、分が悪すぎるというか、なにもかもが足りなすぎるというか、っていうのがありますよねというか。そんなところにいるくらいなら風呂にでも入っていたいというか。

ここまで書いておいてなんだけど開店当初からそういうことを意識していたわけではそんなになく、単純に「なんかカフェとはあまり呼ばれたくないな」みたいな、そのくらいの感覚だったと思うのだけど、それに最近はわりとカフェでもなんでもいいっすわみたいな気分も出てきたのだけど、それにしてもですよ。掲題の通りでたぶん今日発売の雑誌Hanakoのカフェ特集号の「カフェと喫茶のニュースタンダード50」というコーナーの中で紹介していただき(表紙にある「HELLO, DEAR(・θ・)♥」っていうのがジワジワ気になる)、ポストに入っていたので謹んで抜き取ってひと通り眺めたのだけど、なんていうか、カフェってほんとにたくさんあるんだなあ!と、なんというかおどろくしおののくしぞっとした。それぞれがきっといろいろとレベルみたいなものが高いみたいなお店みたいな感じなのだろうけれど、恐ろしい恐ろしいというか、そりゃあしのぎも削れちゃうわ、一瞬で折れるわというか、大変大変と思った。量に圧倒されたというか。

もちろん、これは前も書いたというか何度も書いちゃっているような気がするのだけど、カフェという言葉が持つあいまいさとか広さとか懐の深さみたいなものはあるし(もうほぼ無意味ってくらいに漂白されているというか)、それは裸祭りの舞台の狭さとは比べ物にならないほど大きいから、カフェと名乗ったところで実はそんなにしのぎ削り合いでもなかったりするのかもしれない。宝木も2本なんてケチなことは言わずに一人一本分くらい、しかも真上くらいから落とされるとかなのかもしれない。奪う勝負じゃなくてちゃんとキャッチできるかの勝負というか。
それに必ずしも宝木を取らなければいけないわけでもないかもしれなくて、裸祭りでもその争奪戦とはほとんど関係なさそうに人だかりの外側でヘラヘラとしている男たちもいるから、そういう遊び方もありだろう(ただ彼らはひしめき合いの余波で落下するリスクを負っているし、けっこう高いし裸だし落ちたらしっかり怪我しそう)。

なので、なのでというか、過当競争の土俵の中でわらわらするよりも、できたら自分で違う土俵を用意して、その上で、ひしめき合うのではなく一人とかで踊っていた方がいいような気がする。『ゼロ・トゥ・ワン』でピーター・ティールが「競争すんな、大変だから」みたいに書いていたけどそういう感じというか。(というか個々のお店はそれぞれに自分の土俵を作ってやってらっしゃるのかもしれないですよねそもそも。フヅクエが「うちはカフェっていうよりあれなんだよな…いい言葉が見当たらないんだけどさ…」みたいなブツブツ言ってるのよりもっとちゃんと自覚的に。というかそれって差別化みたいなあれか。差別化って言うと一気につまらないけど。というか僕が一気につまらなくなっただけでずっとつまらないことを書いていたっていうことか。ここまで読んでくださっているお優しいみなさんには非常になんというか「残念だったね」と言ってさしあげたいところ)

まあ、しかし、なんていうか、あれこれ書いておいてあれなんですけど、いつも思いますけど、ご紹介いただきなんかこんな店が恐縮ですすいません光栄ですというのは本当にありますよね。いやいつも思うというのは嘘だな、先日のOZマガジンとか「北欧、暮らしの道具店」のリトルプレスのときとか、「本を読む場所」であるとか「一人で過ごす場所」であるとかの括り方のときは「こんな店が」とかはまったく思わないのだけど、カフェスイーツのときとか今回のような、「カフェとして」みたいなときは思うというか、「カフェ」で括られたときに紹介に耐えうるような強度をこの店は持っているのだろうかみたいな(まあそれこそがカフェというあれの広さとかなのかもしれないけど)。大丈夫ですか?うち場違いじゃないですか?みたいな気分になる。

ともあれ、フヅクエが載っているページを見ると面白くて、その見開き2ページで紹介されている他のお店が「喫茶室ルノアール新宿西口駅前店」「COFFEE VALLEY」「CACAO STORE」「新宿らんぶる」という。この雑多さはすごく好ましいというか、なんかすごい並びに入ったなというか。
それからどうでもいい発見なんですけど、50店の中でフヅクエとブルーボトルコーヒー青山カフェだけが電話番号非公開ということに気づいたため(ブルーボトルは「非公開」でフヅクエは「なし」という表記。俺だってケータイですけど電話持ってるよ!)、アメリカからやってきた巨人ブルーボトルコーヒーとフヅクエが肩を並べた歴史的瞬間。どっちが電話番号を公開しないままでいるかの勝負。負けちゃいられねー。というか。まいいや。
あと、これは確認のあれで原稿を拝見するまで知らなかったのだけど今回は川口葉子さんのご推薦みたいな枠でのご紹介で、「え、マジで、なんと!」と思ったのだけど、これは大学時代とかにall aboutのカフェ案内の記事読んで「ここ行ってみたいな」とか、京都行ったときに川口さんのカフェ本買って「あそこ行ってみよう」とか言っていた身としては(僕カフェ好きなので)、すごい光栄なことで。

というわけで初めまして、カフェと喫茶のニュースタンダード50・フヅクエです。今日からはフィフティーフヅクエと呼んでください。という話でした。

「メディア掲載等」の他の記事