本の読める店

スーパー銭湯とフヅクエ

Entry blog fuzkue283

昨日書いた仕組みの改定について、説明の文章を書きはじめたというかひとまず一気に書き上げたのが9月15日とかで、グザヴィエ・ドラン見に行った夜で、きりもいいし10月1日に変えようかなと思っていたのだけどなんやかんやと1ヶ月のあいだ文章をいじり続けていた。どうしたらすっと理解いただけるか、納得いただけるか、できるならば共感いただけるか、ということを考え続けていたり、友だちに読んでもらって指摘をもらって書き換えたり、ということをやっていたら1ヶ月が経った。
「これはけっこう大きな変更だよな」と思って構え続けていたというかビビっていたのだけど、最後の推敲をして印刷した日曜日の夜に突然、憑き物が落ちたみたいに、「なんだ、こんなの小さなことじゃないか、ブログとかでわざわざ書く必要性すら疑わしいレベルだわ、みんな余裕で受け入れてくれるっしょ、余裕っしょ」みたいな極端な楽観に至った。
これは、その日のお客さんの多くが、今回の改定で影響をこうむらない、改定前と後とでお支払い額の変わらないオーダー内容あるいはお支払い額だったというのがたぶん大きくて。そうじゃない日の夜であったら印刷しながら緊張していたかもしれない。「全員に見放されるんじゃないか…」とか思いながら。安定の安直。

今回の改定の中身は昨日も書いた通り、オーダー内容に応じてお席料うんぬんかんぬんという感じで、2000円前後のオーダーをいただくとお席料0になるくらいのイメージでよいかと思うんですが、「逓減お席料制」と自分の中で命名しているのだけど、見方によれば「席料がどんどん小さくなる実に親切なシステム」で。

で、なんでその仕組みの導入が必要となったかと言えば、自然状態においては、ご滞在の時間が同じだったとしても、オーダーを重ねるか重ねないかは人によって完全に左右される、現在の平均のご滞在時間から考えると、店にとっては重ねていただく必要がある、あるいはそれに準ずる金額を得る必要がある、僕はオーダーを促すお声掛けはしたくない、じゃあ仕組みで解決、ということだ。(促したくない云々の理由は説明文に書いたしいたずらに長くなるので今は書かない。要は察するコスト問題というか)
つまり、というか、これまでの仕組みのままでは生じてくることが判明した齟齬というか、「これ仮に集客ままなっても売上が届かない…」となった理由は、平均のご滞在時間が想定していたよりも長いものになっているから、というところで。それによっていわゆる客単価の底上げの必要が生じたという格好なのだけど、これは店にとっては嬉しいというか誇らしい想定外でもあって。なぜって、「一人時間をゆっくり楽しむ」という価値を提供しようとしている店なので、ゆっくり過ごしていただくことはその価値が受け入れられたという証左なので。
そういうわけで、この素晴らしきゆっくりを守りながら、オーダー内容に左右されない仕組み、この場所での時間を享受された方から等しくいただく仕組みにした、という感じで。
必要がある必要がある、と書いたけれど、必要がありもするし、また、それだけの価値は提供しているという自負もある、という感じで。

うねうねと文章をいじり続けたり考え続けたりしている時期のある日、道端で出くわした友だちと立ち話をしている際に「こういうふうに変える予定なんですよね」と言ったら、その友だちは「フヅクエはフヅクエというか、カフェとかじゃなくてスーパー銭湯とか映画館みたいな感じだもんね」ということを言ってきて、あ、なるほど、超それかも、と思った。
たしかに、僕が望むのはスーパー銭湯や映画館、あるいは遊園地とかでもいいのだけど、に行くときの構えでフヅクエに来ていただくことで、「いい時間を過ごしていい気分になるぞ」というモードで向かってほしいというか。スーパー銭湯がいちばんしっくりくるかな。スーパー銭湯ですわ。これからは「仕事は何してるの?」と言われたら「スーパー銭湯みたいな店やってます」と答えることにしようかな。
まいいや。

で、こういうふうに書くと、自分はあなたが必要としており同時にそれだけの価値があると自負されている金額に達するだけのオーダーをしてこなかったけれど、気分はスーパー銭湯だったんですけどね、いい時間を味わわせてもらっていたんですけどね、察せなくてなんかすいませんでしたね、というふうに思われる方がいるんじゃないかと心配なのだけど、「それは違うんです!全然違うんです!」と腕をぶんぶん振りながら言いたくて、これはもう完全に「察せなくて」と言わせることになる仕組みが間違っていて。
スーパー銭湯に行って入浴料知らないけど例えば1000円で、1000円払って存分に楽しんだら帰り際に「いや、できればビールの一杯くらいは飲んでいただかないとこちらとしては…」とか支配人か何かに言われたら「なんだよそのできればって」と思うはずだけど、「最初から1500円でドリンクチケット付きとかにしておけよ」と思うはずだけど、そういうことで。

なんか、昨日今日とこれを読んだ人にどういう気分を与えているのかいまいちうまく想像がつかなくて、間違った書き方になっていないといいなあと懸念しているのだけど、どうなんですかね。祈るばかり。
スーパー銭湯スーパー銭湯言ってたらスーパー銭湯行きたくなってきた。

photo by 斉藤幸子

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